門脇麦、主演サスペンス「二重生活」で長谷川博己を尾行&密会現場を目撃
2015年5月14日 00:00

[映画.com ニュース]若手実力派女優・門脇麦の主演で、小池真理子氏のサスペンス小説を映画化する「二重生活」の撮影が、都内のコーヒーショップで行われた。尾行におぼれていく女子大学院生を演じた門脇が、長谷川博己扮する既婚男性、篠原ゆき子演じる愛人の密会を目撃してしまう緊迫の場面だ。
大学院生・珠は、恩師である篠原に論文のテーマとして尾行をすすめられたことをきっかけに、隣人・石坂の日常をのぞき見る行為にのめりこんでいく。珠役に挑んだ門脇は、「『なぜ尾行にはまっていったのか』ということがないと説得力がないので、『満ち足りていないものを埋めたいのか』など、キャラクターを探り探り考えていくのが難しかったです」と振り返る。
メガホンをとったのは、NHK特集ドラマ「ラジオ」「開拓者たち」などを手がけた俊英・岸善幸監督だ。これまで震災などを扱ってきたが、本作では「人間性はいろいろな局面で現れるものだと思います。極限状況はいたるところにあって、日常の闇や人に見せられない秘密が潜んでいると思うので、えぐり取れば人間性は日常の中からあふれてくるのではないか」とテーマを定めた。「テレビでは家族は大切だと描いてきましたが、どういう意味で大切なのか、構成員それぞれを幸せにできるのかという問いかけや、家族ひとりひとりを見つめられるのは、映画しかないと思います。映画館で見た時に『こういう見方もあるんだ』という作品ができたらいいなと思いました」と映画監督デビュー作に挑んだ。
「セリフだけでなくて表情も大切にしてきましたし、目の動きは心理を語ると思う」という岸監督は、門脇の目にひかれたという。「アグレッシブな尾行時も、恋人と過ごす穏やかだけれど本当は満たされていない日常も、すごくいい目をしている。今回、第三者の目、本人の目という視点にこだわっているので、この魅力的な目がないと描けないんです。人をのぞく罪深い目線も、人に見つめられて苦しむ目線もさすが」と賞賛を惜しまない。
門脇らを手持ちカメラで追うことで、観客も登場人物をのぞき見している感覚に陥る。岸監督は「全員が誰かに見られている、それがベースとしてあります。のぞきって罪深いけれど、人の心をそそるものがある」と尾行という行為を軸に、心理サスペンスに仕上げた。岸監督は、シーンに空気を生み出すためカット割をつくらない。「セリフを間違えようが段取りから外れようが、最後までやってもらいます。そのシーンでカメラは向けていない役者の方でも、お芝居をして全部体験してもらうことで、間や空気など全体に同じ空間を流せるんです」。
撮影監督・夏海光造による映像も印象的で、役者の素をとらえるかのように生々しく演技を切り取っていく。門脇は「いつもと違う空気があって、どのシーンも撮影している感じがなく、(クランクインから)3日目くらいまで頑張れている手ごたえがまったくなく、不安になりました。普通の生活ともうひとつこの現場で生活している感じだったので、演じられているのか不安になったりもしましたが、いやでも自分の人間性をにじみ出させる撮影方法だと思います。私は雑味がある方が好きなので、そこにいる感覚を大事に信じてやってみようと思っています」と真摯な眼差(まなざ)しで語った。
「二重生活」は、2016年初夏に全国で公開。
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