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英国ナショナル・ギャラリーに3カ月密着 ドキュメンタリーの巨匠F・ワイズマンに聞く

2015年1月16日 16:25

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フレデリック・ワイズマン監督
フレデリック・ワイズマン監督
(C)Victor Sira

[映画.com ニュース]第71回ベネチア国際映画祭栄誉金獅子賞を受賞した、フレデリック・ワイズマン監督がロンドンのトラファルガー広場にある世界最高峰の美術館ナショナル・ギャラリーに迫る「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」が1月17日公開する。数々の名画、運営スタッフ、修復作業の工程、そして来訪客の横顔と英国の至宝と称される美術館のすべてをありのままに映し出し、1824年の設立以降、190年以上にわたって人々から愛され続ける理由を、ドキュメンタリーの巨匠が紐解いていく。

病院、学校、裁判所、劇場など、人間の集う「場所」をテーマにした作品を発表し続けている。「日常的な状況に興味があるからだ。そこで起きる出来事をできるだけ撮っていきたい。前もってこうしたいとか、こういう画を撮りたいとは思わないが、その場で起こっていることは何も逃したくない。一方、概念は撮れないし、撮るつもりもない」と撮影に対する姿勢は一貫している。

今回、美術館を選んだ理由は「社会の中の、文化的な生活というものに興味があった」というもの。以前から撮影を希望していたが、母国アメリカではかなわなかった。「当初はアメリカの美術館に撮影を申し込んでいたが、協力費の要請があり、諦めた。今までも、これからも、こちらがお金を払って、撮影するということはしない。そんなことで美術館を撮るのに30年もかかってしまった。当初あったアメリカの生活への興味が、やがてヨーロッパ、つまりフランス、イギリスでの生活へと広がっていったことが、今回の映画へと繋がったということもある」

画像2(C)2014 Gallery Film LLC and Ideale Audience. All Rights Reserved.

ナレーションや音楽などを一切使わず、カメラが映し出すすべてを観客に委ねる作風が特徴だ。「すべてが複雑で、曖昧であるということをわかってほしいと常に考えている。それは映画を作り始めた当初から変わっていないスタンスだ。一つの答えがもたらされることはないのだ。何においても、我々の社会は複雑で曖昧なのだ。自分自身として映画を撮るということは、ジャーナリスティックな作業をしているというよりは、小説を書いている作業に近いと思っている。複雑に構築していくのだ。一つの結論にたどり着くことも、見出そうとも思わない。観客には間接的に物事を伝えていきたい。提示されるものは、あくまでもヒントでしかないはずだ」

映画の中で、「絵画には時間がない」と専門家が語る場面が映されるが、監督自身映画における時間についてこう語る。「絵画は同時であり、一瞬だ。しかし映画は絵が続いていく。映画は続きものなのだ。それが時間を作っていく。時間の捉え方がまったく違う。例えば、詩は3分で、芝居は3時間のストーリーラインがある。アートフォームによって時間の捉え方が違ってくるというのは、興味深いことだ」

今年で85歳を迎えた。精神異常犯罪者のための刑務所内矯正院に潜入し、物議をかもした1967年の初監督作「チチカット・フォーリーズ」以降、精力的に作品を発表してきた。今後の新作については「すべては体調次第だ。体調が良ければ、映画は作っていくだろう。そうでなければ、撮れない。当たり前のことだ」と言い切った。

ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」は、1月17日から東京・Bunkamuraル・シネマほか全国で順次公開。

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