「100歳の華麗なる冒険」スウェーデン国民的ベストセラー小説の映画化への道のりを監督が語る
2014年11月7日 14:45
[映画.com ニュース]人口およそ960万人のスウェーデンで販売部数100万部以上という国民的ベストセラー小説を映画化した「100歳の華麗なる冒険」。100歳の誕生日に老人ホームから脱走した主人公アランの奇想天外な人生と新たな珍道中をスクリーンに描き出したフェリックス・ハーングレン監督が来日し、映画化までの道のりや主人公との共通点を語った。
原作小説「窓から逃げた100歳老人」を、以前から親交がある本作のプロデューサー、ヘンリック・ヤンソン=シュバイツァーに勧められたことがすべての始まりだというハーングレン監督。多忙を極めていたため、すぐには着手できなかったが「何度か電話で催促されて、いざ読み始めたら面白くて、10ページ読んだら『これは最高だ。ぜひ映画化しよう』」と即決。最後のページをめくる前に、原作者ヨナス・ヨナソンと映画化に向けた交渉を始めたというから、そのほれ込みようは相当なものだ。
「ストーリーがファンタスティックで、アランの繰り出す冒険が実に魅力的。年齢を重ねても、人生が終わるわけではないというところも好きだ。アランは100歳になってもグッド・ライフを送っている。人生を楽しんでいて、未来のことを心配しすぎたり、過去のことを後悔しすぎたりしない。アランのように今を生きることの大切さに目を向けさせてくれる物語だよね」
数カ月の交渉で映画化権を獲得したハーングレン監督は、脚本の執筆に取り掛かった。100歳の主人公はとても面白い考え方の持ち主であるにもかかわらず、セリフが少なく、体の動きも少ない。そこで、「フラッシュバックをパズルのように組み立て、アランがどんな人間なのかを表現することにした。過去のシーンを見ることで、観客はアランの人柄を知ることができるんだ」。こうして、若き日のアランが歴史の重要人物と出会うエピソードの数々が構築されていった。
そして、「ひとりの役者に25歳から100歳までのアランを演じてもらいたかった」ため、キャスティングにも頭を悩ませたという。「見た目が似ている(俳優一家の)スカルスガルド一家に出演してもらうっていう手もあったけどね」と冗談を織り交ぜながらも、「映画というものは、監督が作り出すファンタジックな世界に観客がずっと入り込んでいなきゃいけないと思う」と熱弁をふるう。そこで、監督が白羽の矢を立てたのが、スウェーデンの国民的コメディ俳優ロバート・グスタフソンだった。
最初は乗り気だったものの「こんな複雑な話、映画化は無理だ」と難色を示したグスタフソンだが、約半年後に完成した初稿を読み出演を承諾。ハーングレン監督は、その後も2年ほど改稿を重ね、撮影には約1年を費やした。スウェーデンでは破格の約10億円もの製作費をつぎ込み完成した本作は、本国で「アナと雪の女王」を超える大ヒットを記録。さらに、アランは“映画史上最高齢のヒーロー”として、ドイツやオランダ、ノルウェーなどヨーロッパ各国でも映画ファンを魅了していった。
「アランと私の共通点は、生きることにすごく好奇心があるところ。私は、未知の領域や、どう取り組んでいいのか分からない仕事が好きだから、周りに失敗するよと言われるようなプロジェクトに、エキサイティングだと思って飛び込んでしまうんだ」
チャレンジ精神おう盛なハーングレン監督は、コメディアンや俳優としても活躍し、自身がメガホンをとる作品で出演を兼ねた経験も豊富だが、本作では最初から監督業に専念するつもりだったという。プロデュース業もこなすバランス感覚を発揮し、ともすれば不条理になりかねない冒険譚を原作に通ずる絶妙なユーモアで描ききった監督が、持ち前のサービス精神からこんなことを教えてくれた。
「実は、1シーンだけエキストラでほんのちょっと出演しているんだ。駅にいるナチスの兵隊役でね。合成するための背景を撮影していたんだけど、ひとり足りなかったから『僕がやる』と制服に身を包んでカメラに収まったら、みんな笑っていたよ(笑)」
「100歳の華麗なる冒険」は、11月8日から新宿ピカデリーほか全国で公開。
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