東京国際映画祭・矢田部プログラミングディレクター、衰え知らずの意欲の源
2014年11月3日 22:00

[映画.com ニュース] 映画祭の「顔」といえば、やはりコンペティション部門である。世界各国からえりすぐりの新作が集い覇を競う晴れ舞台。東京国際映画祭(TIFF)で作品選定の重責を担うのが、矢田部吉彦プログラミングディレクターだ。
「なるべく意識しないようにはしているんですけれど、やっぱりプレッシャーは感じます。もっと一般受けする作品が求められているのかなと思う時もありますし、そういう作品ばかりだとコアな映画ファンにそっぽを向かれてしまうかもしれない。いろんな意味で表に立つプレッシャーを感じつつ、その中でいかに自分の納得できるセレクションをするか、とても悩みます」
今年の応募は92の国と地域から1373本。選定は約10人のチームで行っているが、段階的に絞り込むのではなく、まずはアジア、ヨーロッパ、南北米と地域別に分けるという。出品作の製作国が偏らないようにするためで、さらにすべての作品を必ず2人以上が見ることにしている。
「1人目がどんなにダメだと思っても、必ずセカンドオピニオンは取り入れるようにしています。各地域から万遍なく見せたいですし、コンペの15本を見れば今の世界の状況が分かることも必要だと思います。日本映画や米国、フランスなど映画大国の作品が2本入ることはあるでしょうけれど、なるべく地域がばらけて幅広く網羅したいですね」
そのために例年、1月からオランダ・ロッテルダムを皮切りにベルリン、カンヌなど各国の映画祭を回り、情報収集と選定作業に余念がない。プライベートも合わせれば年間600~700本の映画を見るだけに目利きは確かだろうが、15本に絞り込む作業はギリギリまで苦悩の連続。たとえ選出してもさまざまな事情でキャンセルになったり、泣く泣く落とす苦渋の決断をしたことも1度や2度ではないという。
それだけ心血を注いで厳選した作品は当然、あらゆる賞の対象となる。賞レースこそコンペのだいご味だが、自分なりの予想は一切しないという。
「選び終わった後は、あまりにその15本に愛着があるので、実は僕が一番嫌いなのがクロージングなんですよ。賞を取った人は喜んでいるけれど、取れなかった人は表には出さないけれどやはり落胆しているんですよね。自分の息子、娘に優劣をつけるようで、それがもうつらくて…」
半面、愛着があるからこそ作品や監督、俳優がTIFFをステップに世界へ飛躍し、新作で東京に戻ってきた時の喜びは計り知れない。映画祭での上映後に日本で配給されることも念頭に置いている。
「賞を取っても取らなくても日本の配給が決まることはとても重要で、映画祭でしか見られない映画があってもいいとは思うけれど、配給会社の目に留まる作品を選びたいとも思っています。つながりができれば最高で、(出品した)皆さんは東京でいい思い出を持って帰っていただくことが多いので、新作ができたから見てよというサイクルが最近できてきたという喜びもあり、やりがいの一つになっています」
そのために、コンペ作品の舞台挨拶や上映後のティーチインの司会も自ら買って出ている。
「やりすぎだとは言われるんですけれど(笑)、作った人と見る人の間に立って双方のリアクションを見て、その場が盛り上がった時に幸せだなって思いますし、すごいモチベーションになりますね。作品を選んだ人が愛着を持って紹介するという姿勢は映画祭としてあるべきだと思います」
理想を掲げればキリがないが、矢田部氏の意欲が衰え知らずだ。
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