「“違うこと”をパワーに変えたい」 トライアスロンに挑む“頑固親子”を描いた「グレート デイズ!」監督&主演俳優に聞く
2014年8月29日 14:20

[映画.com ニュース] 車いすの青年とその父親の頑固親子が、ハンディキャップを乗り越えトライアスロンの難関レースに挑戦する姿を描いた「グレート デイズ! 夢に挑んだ父と子」。オーディションで息子役に抜てきされたファビアン・エロー、ニルス・タベルニエ監督が、今年6月に開催されたフランス映画祭で来日した際に、本作に込めた思いを語ってくれた。
車いす生活をおくる17歳のジュリアン(エロー)は、失業したばかりで家族とのコミュニケーションがうまくとれない父親、愛する息子を心配するあまり過保護気味な母親と、バラバラになりつつある家族を案じていた。そんなある日、ジュリアンは父が元トライアスロン選手だったことを知り、一緒にトライアスロン最難関である“アイアンマン・レース”に出場しようと持ちかける。最初は無謀な挑戦に反対していた両親も、かつてないジュリアンの熱気に押され、一家は夢に向かって一致団結してく。頑固な父・ポール役を名優ジャック・ガンブランが熱演した。
「実際にハンディキャップをもった青年を起用したい」というタベルニエ監督の意向で、一般オーディションにより見出されたエロー。出演は「とても偶然なことで、理学療法士の人がキャスティング募集を知って、『応募しなよ』って背中を押してくれたんだ。最初はそこまで乗り気じゃなかったけど、気軽な気持ちでオーディションを受けてみたらなんと僕に決まったんだ」。

本作の見せ場のひとつである、臨場感あふれるトライアスロンレースのシーン。タベルニエ監督は、あえて本物のレースにキャストを参加させて撮影するなど、リアリティ描写にこだわった。「レースに限らず、全てリアリティに忠実でありたいと思っていた。スポーツも演技も感情表現のひとつ。いわゆるスペクタクルで誇張しないようには注意していた」という。
初の演技で主演という大役に加え、トライアスロンという過酷なスポーツにも挑戦するという、エローにとってふだんとは全くかけ離れた日常の連続。「すごく興味深い経験だったし、撮影中は映画を撮る喜びを感じていたよ。ジュリアンが感じていることを僕も本当に感じないとうまく演じられない。自分ひとりだけじゃなく、共演者の人たちと一緒に作り上げたんだ」。また、「シナリオを読むだけでは分からないこともあったし、4カ月かけた準備作業はとても大変だった。その努力の結果がスクリーンに表れていると思う。僕も映画を見ると撮影時期の喜びを思い出すよ」と達成感をにじませた。
ジュリアンはとても頑固な青年。エロー自身は柔和で温厚な人柄だけに、スクリーンとのギャップにも驚かされる。「フランスには『一度思い込んだら山まで動かしてしまう意思』というような言葉があるんだけど、まさにジュリアンはそういう頑固な男の子。僕とはちょっと違うけど、監督から求められていたのはそういう男の子像だった」そうで、これはエローがしっかりとジュリアンを演じていたことの証明。しかし、2人の間にはキャラクターの“柱”となる共通点もあった。
「僕が運転免許を取る時も、周囲は口をそろえて『無理だよ』と言った。だけど僕自身は絶対取れると信じていた。免許そのものより、自立したいという信念をもつことが大事なんだ。そこがジュリアンと僕に共通しているところかな。僕はハンディキャップがあるからって家に閉じこもっていたくないし、ハンディキャップがあることすら忘れちゃう瞬間もよくあるよ。観客もジュリアンを障がい者という視線ではなく、普通の人間として見るはず。僕はお互いに“違うこと”をパワーに変えていきたい」。
トライアスロンへの挑戦を通じ、溝のあった親子が真正面から向き合っていく姿を描いたドラマ。しかし、ジュリアンの成長というよりは、ジュリアンによって突き動かされた両親の成長物語ともいえる。タベルニエ監督は、「もちろん息子は成長していくものだけど、子どもからもたらされるエネルギーによって親も成長する。そうやって互いに変わっていけるということに重点を置いた」と意図を説明。それは監督自身の実感から生まれたそうで、「撮影前に病院など色々な場所を訪問したけれど、そういった光景をたくさん目にした。子どもの存在によって、自らを問い直して変わっていけることは美しいと思う。大人になると誰かから学ぶことは難しいけれど、実はとても大事なこと。そういうポジティブな映画を作りたかった」。
「グレート デイズ! 夢に挑んだ父と子」は、8月29日からTOHOシネマズ日本橋ほか全国で公開。
(C)2014 NORD-OUEST FILMS PATHE RHONE-ALPES CINEMA
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