若松孝二監督が公開を熱望したドキュメンタリー「革命の子どもたち」監督に聞く
2014年7月4日 07:00

[映画.com ニュース]日本赤軍の重信房子とドイツ赤軍のウルリケ・マインホフという2人の女性革命家の素顔と母親としての姿を、それぞれの娘である重信メイとベティーナ・ロールの視点から映したドキュメンタリー「革命の子どもたち」が7月5日公開する。監督は、アイルランドのドキュメンタリー作家シェーン・オサリバン。故若松孝二監督から助言を受け、また、若松監督作品の映像も資料として盛り込まれている。来日したオサリバン監督に話を聞いた。
テロリストと呼ばれた母親のもとで過酷な幼少期を強いられ、壮絶な人生を歩んできたふたりが当時の苦悩や母への思いを語り、母親たちが目指した革命と向きあっていく。東京、ベイルート、ヨルダン、ドイツで取材を敢行し、当時のニュース映像などふんだんなアーカイブ映像を用いたほか、足立正生監督ら関係者たちのインタビューを織りまぜながら、2つの世代の女性たちの生き方を重層的に描く。
大学卒業後、2年間日本に住んだ経験が1960年代の日本に興味を持つきっかけとなり、帰国後は日本の60年代のカウンターカルチャーについての短編ドキュメンタリーを発表した。「私にとって、一番クリエイティブな時期でした。舞踏も習っていましたし、大島渚監督の作品や、寺山修司にも傾倒していました。そして、9・11前頃に、68年の運動についてリサーチを始めました。調査を進めていくうちに、マインホフと日本赤軍にたどり着き、そこにしかも女性のリーダーがそれぞれいて、独特のキャラクターだとわかったのです。彼女たちには子どもがいて、そのことを掘り下げれば面白い物語になるだろうと、映画化を思いついたのです」
前述の短編製作時に若松監督に取材したことが縁で、今作の日本公開につながった。「若松監督とはゴールデン街のバーで会いました。若松さんの映画も好きですし、彼が描いた時代にもひかれていました。ですから、今作で若松さんの映像を使うことで、その時代の雰囲気やにおいが描けるのではないかと思ったのです。彼の作品は私にとってのインスピレーションであり、時代を描くことに必要だったのです。この作品の配給についても、若松さんが後押してくださったこともあるので、まさにこの作品の父親的な存在です」と述懐する。

2003年にメイとベティーナから許可を得たものの、資金調達に時間がかかったこともあり、構想から完成まで10年余りの月日を要した。製作費用の半分がアーカイブ映像のライセンス代に消えたが、乱射事件後のテルアビブ空港、マインホフが収容された刑務所など、当時の状況をうかがい知ることのできる貴重な映像ばかりだ。
取材を通して感じたメイとベティーナそれぞれのキャラクターの違いを問うと、「ベティーナはとてもタフで、強い女性です。それには理由があって、常にドイツのメディアにテロリストの娘だと描かれるイメージがあって、それから自分を守るために、自分と母親を切り離さなければならないと、よろいを着るように強く、自分の意見を発信していくということになったのだと思います。一方、メイさんは母親に対して協力的で、非常にオープンに自分のことを話してくれました。そういった意味で対照的なふたりでした」と振り返った。
「革命の子どもたち」はテアトル新宿ほか全国順次公開。
(C)Transmission Films 2011
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