世界的ピアニスト・アルゲリッチの豪胆ぶりを三女ステファニーが告白
2014年5月3日 20:05
[映画.com ニュース] 現代クラシック界における最も偉大なピアニストのひとりであるマルタ・アルゲリッチの素顔を追ったドキュメンタリー「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」の監督で、アルゲリッチの三女であるステファニー・アルゲリッチが来日し5月3日、小澤征爾の弟で親交の深いエッセイスト・小澤幹雄とのトークセッションを都内で行った。
現在、母マルタも公演のため来日中。夜の公演を直前に控えているため来場はかなわなかったが、ステファニーが現れると客席からは温かい拍手がわき起こった。ステファニーは母に連れられ、幼少の頃から幾度となく日本を訪れており「私にとっては特別な思いやたくさんの思い出がある国です。母によると、私が初めて歩いたのも日本だったそうです」と明かす。
小澤は、兄の征爾とマルタの公演を何度も見ているが「そう言えば、お母さまが赤ちゃんを連れて来日していたのを覚えています。『肩が凝った』とおっしゃるので、兄と『赤ちゃんを抱いているせいかな?』なんて話していました」と懐かしそうに思いをめぐらせる。作品について語るステファニーを見やり、小澤は「あなたの横顔は若い頃のお母さまにそっくり。お母さまが若かった頃を思い出しました」としみじみと感慨を口にしていた。
ステファニーは自分の母親にカメラを向け、作品をつくることに「何か大きな決断があったわけではないのですが『やらなくちゃ』という衝動に駆られて始めました。その結果、長年私の中で詰まっていたものが作品とともに外に出たような気がしています」と説明。出産を経験して母になったことも大きな転機となったようで「自分が母になり、母を見る視点がこれまでとは異なるものになったのを感じました。これまでは批判的な思いを向けてばかりだったのが、別の視点――母になるとはどういうことか? という問いかけがそこには加わっていたかのように思います」と心情を明かした。
本編では、プライベートな空間でのマルタの姿も映し出される。ステファニーは「これはあくまで私の視点で“母”を切り取った作品。音楽ファンの中にはパジャマ姿のアルゲリッチの寝起きの顔を見てガッカリする方もいるかもしれません」。母からは、シーンのカットの要望などは一切なかったという。「母は自分の昔の発言を見て『いい加減なこと言っているわね』とか『私にも何を言っているか分かんないわ』なんて言ってました(笑)。パジャマ姿を見られることに関しては問題ないのですが、ただ一点『赤いパジャマにすればよかったわ』とだけ言っていました」と明かし、笑いを誘った。
「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」は今秋、全国で公開。