仏新鋭ラファエル・ペルソナがリアリティに徹した新境地「黒いスーツを着た男」
2013年8月30日 12:50

[映画.com ニュース] “アラン・ドロン”の再来と称えられ、本国フランスでも大注目の新鋭ラファエル・ペルソナの最新主演サスペンス「黒いスーツを着た男」が、日本上陸を果たす。「フランス映画祭2013」で来日したペルソナとカトリーヌ・コルシニ監督が、本作の魅力や互いの印象を語った。
社長令嬢との結婚を目前に控えた勤勉な青年アラン(ペルソナ)。友人と羽目をはずして泥酔し、パリの夜道で男をひいてしまい、その場から逃げ出してしまう。やがて、事故の一部始終を目撃していた女性、被害者の妻でモルドバからの不法移民の女性が現れ、3人の男女の運命が静かに交錯していく。
必死で追い求め続けた成功を目の前に、運命の歯車を狂わせてしまったアラン。ペルソナは、「事故を起こしてしまった男の現実を非情に、“お涙ちょうだい”の要素なしに淡々と描いているところに好感をもったよ。ある意味スリラーの趣もあって、ジェームズ・グレイの作品に見られるような世界観だと言われているけど、その点にとても興味をひかれた。アルが罪を償う道を探して色々と苦悩する、その微妙な心の動きが面白いと思ったんだ」と精巧な心理ドラマにひかれて出演を快諾。また、「コルシニ監督のこれまでの作品を見て、俳優の演技が的確であることと、過剰な装飾がない描き方に感銘を受けていた。僕はこれまでベルトラン・タベルニエ監督のコスチューム劇などに出演してきたけれど、余分なものを取っ払ったシンプルな役柄をやりたいと思っていたので、まさにこの作品はぴったりだったんだ」と念願のイメージチェンジを果たした。

女性同士の愛憎を描いた「彼女たちの時間」など、これまで女性を描くことが多かったコルシニ監督だが、本作の主人公は黒いスーツに身を包み、犯すつもりのなかった罪に葛とうする孤独な男。「『黒いスーツの男』って、ジョルジュ・シムノンの小説にありそうな素敵なタイトルね(笑)。ジャン=ピエール・メルビルの作品をはじめフィルム・ノワールではみんな黒いスーツを着ているし、50年代のモノクロ映画もみんな黒いスーツを着ていた」とオリジナルの邦題にも納得の表情。原題の「Trois mondes」は「3つの世界」を意味するが、「『3つの世界』というタイトルをつけたのは、事故の後にそれぞれ社会的階級の違う3人が偶然につながっていく姿を描きたかったから。フョードル・ドストエフスキーの小説に描かれるような、異なる社会階級に属する人間の衝突や、モラルや価値観の違いを描きたかったの。前作でも社会問題を取り上げたけれど、フランス社会のある一面を浮き彫りにしたかった」と真意を明かす。
ペルソナも、「一緒に仕事をしてみて男性の描き方がうまいと思ったよ。僕の義父になる会社のボスや友人など実にさまざまな男たちが出てくるけれど、特に養父の描写は素晴らしく、彼の重みがうまく伝わってきた」とコルシニ監督の男性描写の手腕を絶賛。また、「テストの時にさまざまなやり方を試してくれて、僕の役柄を一定のイメージに固定しないように色々と考えてくれた。コントロールするのではなく、優しく導いてくれたという感じ」と厚い信頼関係をうかがわせる。
コルシニ監督も、「アルという役柄にラファエルはぴったりだった。ラファエルはとても勤勉なので、それがアルの勤勉さに近かったの」とペルソナの自然体を引き出すことに成功。そして、「アルには素晴らしい未来が待ち受けていたけれど、突然の事故によってすべてがダメになってしまった。通常では考えられない出来事に遭遇した時、人がどのようにその問題と向き合うのか。この物語はドキュメンタリーのような側面をもっていて、俳優を通じて登場人物の中に潜り込んでいくという手法なの」と独自のスタイルで心理描写のリアリティを追求した。
「黒いスーツを着た男」は、8月31日から全国で順次公開。
(C)2012 - Pyramide Productions ‒ France 3 Cinema
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