オルガ・キュリレンコ、テレンス・マリック監督との出会いは「最高の奇跡」
2013年8月8日 15:00
[映画.com ニュース] 巨匠テレンス・マリックがベン・アフレックを主演に迎え、男女の移ろいゆく愛を描きだした新作「トゥ・ザ・ワンダー」が、8月9日に公開される。アフレック演じる男性との間に生まれた愛に翻ろうされる、シングルマザーのマリーナを演じたオルガ・キュリレンコが、マリック監督との作品づくりを振り返った。
キュリレンコと本作の出合いは、シナリオもない1枚のメモによるオーディションだった。セリフを言葉にするのではなく、思い描いたキャラクターが表情に現れるかどうかが試され、むきだしの演技が引き出されたという。撮影開始後もシナリオが用意されることはなく、マリック監督との会話のなかですべてが与えられた。「彼がシナリオを与えないのは、事前に用意されたもので俳優に演技してほしくないから。その瞬間の反応を俳優に求めているのよ」。キュリレンコは撮影を通して、役どころから抜け出せなくなるほどに一体となった。
本作は、マリック監督による愛と信念についての物語だ。近年のマリック作品でおなじみの名匠エマニュエル・ルベツキが手がけた美しい映像で、危うい愛の本質に迫る。キュリレンコは、マリック監督と多くを語り合い、「恋愛のあり方は人それぞれで、ひとつひとつ異なっている。この物語はいろいろな形の愛を見せているし、とても広義な意味での愛について語っているわ。真実を学び人生を送るためには、多くの苦痛を切り抜けなければならない時もあるわ。でもそうやって人は学んでいくと思うの」
2カ月におよぶ撮影期間を通して、「いつだって撮影をしていたから、私たちは皆、ずっとキャラクターのままでいたわ。私はマリーナとして、ずっと彼(アフレック演じるニール)の愛を探し続けなければならなかった」。アフレックら共演者とは、「同じ内容を知っているかどうかさえ、知らなかった」とマリック監督と語った言葉を共有することもなかった。だからこそ、内側からにじみ出す生々しい心の移ろいがカメラに収められている。
物語の全体が見えない中での演技に、恐怖心はなかったのだろうか。自らの演技が正しいかわからないと悩む俳優がいる一方で、「どうするべきかわからないからワクワクしたわ」と明かす。「まるで大事な試合みたいで、あらゆる可能性に向かって、いつだって生き生きしているの。いつだって進行中だし、いつだって何かが起きて、クリエイティブな時間があるから、ただ座っているなんて絶対ないのよ。彼(マリック監督)の映画で退屈したことなんて一度もなかったわ」
本作が完成した今、キュリレンコはマリック監督に「彼は素晴らしい映画監督だけれど、素晴らしい人間でもあるわ。人の真実を見ているし、深遠な事柄にだけ関心があって-表面的なことには全然関心がないわ。その人の中身がすべてなのよ」と全幅の信頼を置く。「この映画を心の底から楽しんだわ。素晴らしい時間を過ごせたし、できるものならもう一度やりたい」と充実感をにじませ、「テリー(マリック監督)と仕事をすると、俳優としてとても大きく成長するの。テリーに会えてこの映画に出るチャンスをもらえて、本当に感謝しているわ。だって私の人生で起こった最高の奇跡のひとつですもの。テリーとの出会いは偶然だし、彼は唯一無二の存在だし、しかも限られた本数しか映画を作らないのに、そこに参加できたのはとても特別なことだったわ」
「トゥ・ザ・ワンダー」は、8月9日から全国で公開。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。