バンドネオン奏者・小松亮太「25年目の弦楽四重奏」のリアリティに感服
2013年7月8日 18:00
[映画.com ニュース] ベートーベンの隠れた名曲をモチーフにしたヒューマンドラマ「25年目の弦楽四重奏」の公開記念トークショーが7月7日、東京・角川シネマ有楽町で行われ、日本を代表するバンドネオン奏者の小松亮太が本作の魅力を熱く語った。
フィリップ・シーモア・ホフマン、キャサリン・キーナー、クリストファー・ウォーケンらオスカー俳優が豪華共演するアンサンブルドラマ。結成25周年を迎えた弦楽四重奏団の4人が、パーキンソン病を患ったメンバーの引退をきっかけに、嫉妬やライバル意識、それぞれの家庭の問題などを爆発させていく。デビッド・リンチ作品でおなじみのアンジェロ・バダラメンティが音楽を担当した。
「THE 世界遺産」のオープニングテーマをはじめ、映画「グスコーブドリの伝記」や「体脂肪計タニタの社員食堂」などの音楽を手がけてきた小松は、挨拶代わりにと「風の詩~THE 世界遺産」の一節を披露。本作のリアリティの高さに感銘を受けたそうで、「音楽家の僕から見るとえぐかった(笑)。『弦楽四重奏やっているとこういうことあるよね』っていう話を集めたノンフィクションじゃないかというくらい。“ケンカしたかったら弦楽四重奏をやれ”という音楽ジョークがあるくらい、まさにそれを反映した映画」と舌を巻いていた。
劇中の4人も激しい衝突を繰り返すが、「四重奏はオーケストラと違って人間関係も濃密にならざるを得ない。4人で息を合わせてピアノ1人のようなもの。フィーリングが合わないと煮詰まっていき、最終的に“坊主憎けりゃ袈裟まで憎い”となる。クラシック音楽の世界に深く関わるもんじゃないなと思った」と冗談まじりに四重奏の難しさを語った。
休みなく演奏し続ける“アタッカ”7楽章から構成されるベートーベン異色の名曲、「弦楽四重奏曲第14番嬰(えい)ハ短調(作品131)」にインスパイアされた本作。小松氏は、「ベートーベンってマッチョでゴツイ音楽のイメージがあるけど、これは彼の頭の中の宇宙をそのまま音楽にしたような感じ。人間は死ぬ間際になるとこういうミニマル音楽を作るんだなと思った」と分析していた。
「25年目の弦楽四重奏」は公開中。