P・シーモア・ホフマンを指導した日本人奏者が語る「25年目の弦楽四重奏」
2013年6月22日 09:30

[映画.com ニュース] オスカー俳優のフィリップ・シーモア・ホフマン、クリストファー・ウォーケン、キャサリン・キーナーらが結集した「25年目の弦楽四重奏」で、バイオリン奏者を演じたホフマンの指導にあたったのは、ニューヨーク在住で世界を股にかけて活躍する日本人バイオリニストの岩田ななえ。数々のコンクールに入賞し、ヨーヨー・マら世界的音楽家との共演を果たしてきた彼女の目に、オスカー俳優の役作りはどのように映ったのか。ツアーのために帰国中だった岩田に、プロの視点で見た本作の魅力を聞いた。
2人のバイオリンとチェロ、ビオラからなる弦楽四重奏団。映画では、四半世紀にわたって活動し世界的な名声を得てきたが、ウォーケン演じるメンバーのひとりが病気のために引退を表明したことから、人間関係が微妙なズレをきたしていくさまを、ベートーベンの隠れた名曲に人生そのものを重ね合わせながら描き出す。
ホフマンと初めて対面したときの印象について、「レッドカーペットを歩く俳優さんのイメージが頭にあったんですが、あまりに普通すぎて拍子抜けしました(笑)」と明かす岩田。楽譜の読み方すら分からないというホフマンとその後50時間もの時を過ごすことになるが、レッスンが始まるとすぐに、好奇心おう盛で役に対する真摯な姿勢に驚き、心を打たれたという。「楽器のケースへの入れ方から持ち方、共演者と何を話すのか、常にどんなことでも学ぼうというモードでした。楽器に触れたこともない人間が映画の中でバイオリンを弾くなんて、難易度5つ星です! それでも自宅でのひとりでの練習まで行い、本当に上達しました。教え子の姿勢としては完璧です」と称賛を惜しまない。
完成した映画については、プロの音楽家から見ても“音楽家あるある”と言えるほど、楽団のメンバーたちの生々しいやり取りやリアルな心理描写が描かれているそうで、「まさにあんな感じ(笑)! 人間だから、汚い部分や希望が入り乱れています」と太鼓判を押す。「映画の中でも『四重奏の第1バイオリンと第2バイオリンは順位ではなく役割、適性だ』という意味の言葉がありますが、まさにその通り! その一方で、25年間、第2を弾いてきたロバート(ホフマン)が『第1をやりたい』という気持ちもよく分かります。ソリストを目指すか、違う道を選ぶかというのも音楽家ならみんなが通る道ですね」と共感を示す。
またロバートは、同じ四重奏団のビオラ奏者、ジュリエット(キーナー)と夫婦関係にあるが、実は岩田の夫もチェロ奏者。“音楽家同士の夫婦”という点についても「あるある!」と思わず膝を打つシーンが続出したと言う。
「分かるなあって思いながら見ていました。うちの場合は、互いのスケジュールが重なると家の中の空気がピリピリと張りつめます。『じゃあ練習するから』としか言わなくなって、徐々に空気が研ぎ澄まされていく感じ(笑)。でも互いへの理解があるからいいのかな? 映画のふたりの場合は25年間ずっと四重奏でやっているから、互いへの理解は深いだろうけど、もっと大変かも……。彼らの娘が漏らす不満の言葉に『そりゃそうだろうな』とうなずきながら見ていました(笑)」
「25年目の弦楽四重奏」は、7月6日から全国順次公開。
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