「コン・ティキ」ヘイエルダールの愛息と探検家・関野吉晴氏が対談
2013年6月1日 17:45

[映画.com ニュース] アカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされた海洋アドベンチャー「コン・ティキ」の公開を記念し5月31日、主人公トール・ヘイエルダールの実の息子で、同作にもスーパーバイザーとして参加した海洋学者のトール・ヘイエルダール・Jr.氏が、東京・上野で開催中の特別展「グレートジャーニー 人類の旅」で探検家の関野吉晴氏とトークイベントを行なった。
いかだ「コン・ティキ号」で、8000キロの太平洋航海に挑戦した男たちの実話を映画化。1947年、ポリネシアのファツヒバ島で現地民と暮らしながら研究を続けていたノルウェーの人類学者トール・ヘイエルダールが、ポリネシア人の祖先が南米から海を渡ってきたことを証明するため、1500年前と同じ材料や方法でいかだを作り、5人の仲間とともに太平洋横断に挑んだ姿を描いた。「戦場のクリスマス」「ラストエンペラー」などを手がけた英国人プロデューサーのジェレミー・トーマスが製作に名を連ね、第85回アカデミー賞外国語映画賞にノルウェー代表としてノミネートされた。
同展では、関野氏の長年にわたる冒険を通じて、世界中のさまざまな文化や生活様式などを紹介する。関野氏は、自然の素材から手作りしたカヌー「縄文号」でインドネシアから日本列島までの航海に挑み、「GPSもコンパスも使わず、島影と星を頼りに海を渡った。帆を使ったけど風がなかなか吹かなかったので、4700キロを航海するのに3年かかった」。また、「航海の途中で東日本大震災があった。海は恵みを与えてくれるけど、怒ったり罰を与えたりもする。自然はコントロールできないもの。知って回避するしかないし、なすがままに生きるしかない」と持論を述べた。
これにはヘイエルダール・Jr.氏も興味津々で、「近代的な道具を一切使わず、作り方も当時の図面通りというスピリットは父に共通するものがあって感銘を受けた。ぜひ父にも聞かせたかった。冥土で再会できたら、これを土産話に盛り上がりたい。父が生前に関野さんに会っていたら間違いなくスカウトしていたと思う」と父親の“同志”を称えた。
そして、「父は自分自身を冒険家とは思っていなかった。子どもの頃は水恐怖症で泳げなかったけれど、それを乗り越えるほどの信念があった」と述懐。さらに、「父は人々が宗教や政治、国境を越えてひとつの目的を成し遂げられると信じ、そこに意義を感じていた。海は大陸を隔てるものでなく、自由に行き来するための道だと考えていた」と熱弁を振るった。すると関野氏も、「海ならどこにでも行ける気がする。世界は海でつながっているので、ここからでもインドネシアもノルウェーも行ける。冒険の魅力は常識を覆すこと」と語ると、ヘイエルダール・Jr.氏は「ぜひ船でノルウェーに来て。港でお待ちしている」と歓迎を約束した。
「コン・ティキ」は6月29日から全国公開。特別展「グレートジャーニー 人類の旅」は、東京・上野の国立科学博物館で6月9日まで開催中。
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