上川隆也、満を持しての映画初主演に「毎日が暗中模索」も充実の面持ち
2013年5月17日 07:00
[映画.com ニュース] 上川隆也の初主演映画「二流小説家 シリアリスト」の撮影現場が2月某日、一部の報道陣に公開され、ベテラン猪崎宣昭監督のもと、上川と共演の伊武雅刀が東映東京撮影所内のセットで熟練した演技合戦を繰り広げた。
原作は、2010年に発表された作家デイビッド・ゴードン氏のデビュー作「二流小説家」(原題「The Serialist」)。アメリカのエドガー賞で11年度の最優秀新人賞にノミネートされ、日本でも「このミステリーがすごい!」2012年版・海外編第1位、「ミステリーベスト10」2011年海外部門第1位、「ミステリが読みたい!」2012年版・海外編第1位と、史上初めてミステリーランキングの3冠を達成した話題作だ。上川演じる売れない小説家・赤羽一兵が、刑務所で死刑執行を待つ連続殺人犯・呉井とある取引を交わしたことで、新たな連続殺人事件に巻き込まれていく姿を描く。
この日は、赤羽が伊武演じる刑事・町田から事情聴取を受けるシーンを撮影。上川は伊武との絶妙な掛け合いで、取調室という異空間での赤羽のもつ頼りなさを繊細に表現してみせ、一発OKテイクをおさめた。上川は、「幸いにして主演を務める経験はこれまでにあったけれど、ことそれが映画となると、自分の経験値ではかってはいけない気がしている。知らない領域に踏み込めたという気持ち。包み隠さず申すならば、毎日が暗中模索。反対に言うと、今までと違ったことをやれる。日々楽しみながら迷っている」と充実感をにじませた。また、「なかなか俯瞰(ふかん)では眺められない部分があって、あくまでも毎日毎日シナリオに書いてある道筋を地道にたどっているような感覚。物語の結末がどこに行くのかも正直分からないし、それを考えてしまうと雑念に変わってしまう気がして今は毎日、目の前にある芝居とだけ向き合っている」と明かした。
メガホンをとる猪崎監督とは、連続ドラマ「遺留捜査」からの付き合いになるが、「言葉ではない部分で過不足なくコミュニケーションをとっている。監督の画作りにおける姿勢やロジックは、少なからず分かるようになってきた。20年ぶりの映画ということだけど、それを微塵も感じさせないのはこれまで培われた度量がなせる技。信頼をもって相対している」。また、「原作がとんでもなく面白かった。面白く読ませていただいた一方で、『これをやるのか』と『これをやれるのか』という思いに駆られた。一報出しの時の『震える』という言葉はダブルミーニング。身も震える武者震いもあるけど、先行きの見えない部分も含めた怯えもあった」と話した。
ベテラン伊武との共演は、「原作本が密度の高い長編であり、それを日本に舞台を変え2時間の映画に圧縮する。その濃いテイストはあまさず落とし込みたいけれど、濃すぎるとメリハリがなくなる。そこで伊武さんがコメディリリーフ的な部分も担ってくれていて、伊武さんならではの味を加味してくれている。役柄としては汲々とせざるをえないけど、役者としては本当に頼りがいがあるし、見ていて楽しくて仕方がない」。伊武をはじめ豪華共演者に囲まれ、「自分の能力はさておき、キャッチャーって色々なピッチャーを楽しめる存在。球速や重さや球質をミットで感じて、次の球を待ち、球場全体の動きに目を配り、今はまさにそのような感覚。皆さんが四方八方から投げてくるものとのキャッチボールを楽しんでいる。ミットぼろぼろ」と笑みを浮かべていた。
「二流小説家 シリアリスト」は6月15日から全国で公開。
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