奥山和由プロデューサー、次世代のクリエーターに「成功の信念をもって」
2013年3月31日 09:00
[映画.com ニュース] 次世代の映像業界を担っていく新人を発掘・支援するため、第5回沖縄国際映画祭で新たに発足したプロジェクト「クリエイターズ・ファクトリー」。プロジェクトの審査員で本映画祭のエグゼクティブディレクターを務める奥山和由プロデューサーに、プロジェクト設立の経緯や今後の展望を聞いた。
映像作品であれば実写、アニメなどのジャンルを問わず、監督、カメラマン、俳優、女優、ミュージシャンといった作品制作に携わったあらゆるスタッフの中から最優秀ニュークリエイターを選出する。また、最優秀賞に輝いたクリエイターの次回作は、吉本興業の全面サポートが約束される。
このプロジェクトの発足にはある理由があった。それは「裏を返せば、自分たちが仕事したい人を集めるというプロジェクト。映画祭って出来上がった作品を評価するだけで終わりがち。沖縄国際映画祭の良いところでもあり悪いところは、ラインナップを集めるために吉本興業が映画を作っていること。それが世に出ているのか、出てもいったいどうなのか。映画祭で公開して終わっちゃうロスはもったいない」という危惧だった。「沖縄国際映画祭はすごく良い器。本当の意味で吉本興業にしかできないヒット映画を作らないといけない。今年の審査員のキャスティングも僕が担当したので、審査員にとっても『これはないよな』ってラインナップにしたくなかった」と胸のうちを明かした。
奥山氏のほか、映画監督・俳優としても活躍するお笑い芸人の板尾創路、2012年5月に急逝した祖父の新藤兼人監督を支え続け、2000年の映画監督デビュー作「LOVE/JUICE」でベルリン国際映画祭新人賞を受賞した新藤風監督が審査員を務めた。審査員の選定も奥山氏が行い、「審査は腕っ節の強いやつを鵜の目鷹の目で探す作業になる。だから、とにかくいま映画を作りたくてしょうがない、作り手側の人間を集めた」と説明する。
記念すべき第1回は、「おだやかな日常」のプロデューサーと主演を兼ねた杉野希妃が最優秀ニュークリエイター賞と女優賞の2冠、ミュージックビデオ「Lucky Guy」主演のキム・ヒョンジュンが男優賞、アニメ作品「コーポにちにち草のくらし」で監督と脚本を兼ねた若井麻奈美が特別賞を受賞した。名プロデューサーとして数々の作品を世に送り出してきたしてきた奥山氏は、杉野のプロデューサーとしての手腕を絶賛する。「作品のコンセプトが非常に明解。3.11を扱いながら、女性本能むき出しのエンタテインメントを見せてくれた。女優としても非常に美しい方だけど、他の作品にも同じテイストのパワーがあり、『歓待』(11)でも不法入国問題を扱いながら不倫をテーマに観客を引っ張っていた」と舌を巻いていた。
さらに、常に戦ってきた奥山氏ならではの熱い視線が杉野に注がれていた。「あそこまで作品主義に徹しているのは今時めずらしい。とにかく妥協がない人。社会に対して問題提起や尖った矛先を向ける時に、ああいう人が絶対必要になる。プロデュースとは本来、相当の欲望の深さ、愛情の強さがなければ成り立たないはず。“今日から僕もプロデューサー”とタラタラ作っている、業界に20~30年も腹を立てている自分にとっても、あんなに素晴らしい人はいない。あれだけ映画という生き物の厄介さを理解できる人に会ったのは初めて。彼女と共同でプロデュースする方が、自分ひとりでやるより全然良い作品が出来るという腕っ節の強さを感じた」と戦友感さえ感じていた。
機材のデジタル化が進み、映像表現の幅と可能性が広がる一方で、メジャー作品とインディーズ作品のかい離・二極化が懸念される時代。これから同プロジェクトに応募しようという若手クリエイターたちに、奥山氏が期待することとは何だろうか。
「既得権益に寄り添うことなく、仲間の力で絶対成功してみせるという信念をもっていてほしい。有力者に気に入られるというのもひとつのチャンスかもしれないけど、それにラッキーと寄り添うのではなく、独立した力で成功するマインドをもち続けてほしい。甘っちょろい言葉かもしれないけど、成功を信じ続けるとチャンスも人も寄ってくる。それが証明できるコンペティションになればいいと思う」
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