「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」で描かれるインドの魅力を専門家が解説!
2013年1月30日 19:00

[映画.com ニュース]本国イギリスで大旋風を巻き起こした「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」が、2月1日公開する。東京外国語大学人間文化研究機構地域研究推進センターで現代インドを研究する小西公大氏に、同作の舞台となったインドの描かれ方、そして本作の見どころを聞いた。
ジョン・マッデン監督がメガホンをとった本作は、“自称”老舗ホテルのうたい文句に誘われ、老後をインドで優雅に過ごそうとイギリスからやってきた7人の男女の第二の人生模様を描いた群像劇。ジュディ・デンチをはじめ英国のいぶし銀の名優たちが顔をそろえた。
優雅なセカンドライフを夢見てインドに降り立ったものの、到着した先は改装も行き届いていないボロボロの古ホテル。このホテルを舞台に、登場人物たちの喜怒哀楽を交えた様々な物語が展開していく。小西氏いわく、ビザの問題をはじめ、映画の中でも描かれているようなスパイシーで油っこい食事、褒められたものではない衛生状態など、欧米の高齢者にとって老後のインド居住という選択は一般的ではないそうだが、「こうした過酷な環境だからこそ、毎日が刺激的で、思わぬところで生きていくことの面白さを発見できる世界でもあるのです」とインド生活の醍醐味を語る。

劇中では、インドの現代の若い恋人同士が、理想とする恋愛結婚「ラブ・マリッジ」と子の結婚相手を両親や親戚が決める伝統的な結婚観「アレンジド・マリッジ」とのはざまで悩むシーンも。「現代の都市部の若者たちは、密かに恋愛を楽しんでいますが結婚は別。ラブ・マリッジにこだわり、親を必死に説得する青年ソニーは、舞台となったジャイプルという地方都市だからこそ出てくる今風の若者、ということができるでしょう」と分析。また、同性愛にスポットを当てたエピソードは「当然ながらインドにおいてもセクシュアル・マイノリティの人びとが存在し、『カーマ・スートラ』にも同性愛の記述があります。しかし、彼ら/彼女らに対する偏見はインドにおいてもとても強いので、(劇中のエピソードは)この映画のハイライトの一つ」という。
インドが舞台の作品となると、とかく“スピリチュアル”や“悠久の国”などの様にデフォルメされがちだが、本作での描かれ方はどの様なものだろうか。「本作でインドが舞台である必然性は、英国の便利な生活に慣れ親しんだ高齢者たちが“したたかさ”を発揮しなければならなくなるほどに、インドでの生活が予想外な出来事や価値観に満たされている、という部分にあるのでしょう。過度な誇張はなく、欧米におけるティピカルなインド像に拘泥することもなく、適度にライトに描いているところが魅力です。欧米の高齢者が感じ、経験するであろうインドの姿を等身大で描いていくようなスタイルです。インドを訪れたことのある人にとっては、懐かしさを感じる“あるある”ネタが多いので、そのような楽しみ方もできます」。
インドといえば、タージ・マハルやガンジス河ばかりが注目を浴びるが、本作の舞台は州都であるジャイプルと、州南部の中世都市ウダイプル。「前者は砂岩でつくられた王家の美しい宮殿の色をとってピンク・シティ、後者は湖に囲まれた王宮が有名な都であることからレイク・シティと呼ばれ、ともにラージャスターン州の美しい王都です」とロケ地の魅力を紹介する。
そして、「インド世界に馴染みがない人にとっては、それなりに厳しい世界かもしれません。だからこそ、自分の生活スタイルや価値観を見直し、少しずつ他者に対して寛容になっていくような“成長”をすることができる世界でもあります。老後のロングステイは制度上難しいかもしれませんが、一度インドにお出かけいただき、インドに翻弄されるのも、人生のスパイスの一つとしてありかもしれませんね」と呼びかける。英国人シニアが繰り広げる人間味あふれるストーリーとともに、豊かなインド文化をぜひスクリーンで楽しんでほしい。
「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」は2月1日全国公開。
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