「その夜の侍」堺雅人×山田孝之、初共演で演じた濃密な“赤堀ワールド”を語る
2012年11月16日 15:00
[映画.com ニュース] 平凡な人生を送っていたが、ひき逃げで最愛の妻を失い復しゅうに人生をかけるようになった中年男性と、出所後も反省はおろか血も涙もない行動を繰り返すひき逃げ犯。現代社会の孤独な人間関係の中で生まれた二つの狂気が対じし、極限状態の中で答えを見出していく姿を描いた「その夜の侍」が、11月17日公開となる。初共演が注目された主演の堺雅人と山田孝之が撮影を振り返った。
実力派として知られ、共に第一線で活躍する二人にまず互いの印象を聞いた。堺が山田に注目したのは「電車男」からだった。「すごい人がいるなと。作品ごとにいろんな顔を出される方だなという印象があったので、是非ご一緒したいと思っていたらこういう願ってもないチャンスが来て、非常に楽しみにしていました」と笑顔で明かす。山田も堺の演技には以前から驚かされていたといい「どこまでが嘘なんだろう、どこから本当なんだろうと思うんです」と独特の表現でたたえた。
堺が演じるのは妻を亡くした工場経営者の中村、山田は冷酷なひき逃げ犯の木島に扮する。この二人と、それぞれを取り巻く周囲の人間たちとの描写が交互に展開されるため、堺と山田が共にスクリーンに現れるのは実はわずかなシーンのみだ。しかし、堺が「そのワンシーンが非常に濃密だったので、しばらく(共演は)いいやという感じでした(笑)。時間がたったらまたやりたいなとは思いますが」と言うほど、熱のこもった撮影となった。山田も「短かったですが、この作品でこの役で一緒にやれたのが本当によかった」と手ごたえは十分のようだ。
劇団「THE SHAMPOO HAT」全作品の作・演出・出演を担当する演劇界の鬼才、赤堀雅秋の戯曲を赤堀自身がメガホンをとり映画化した。中村と木島が生きる世界を軸に、善悪の区別なしに現代社会のどこにでも存在しそうな人間と人間の関係性が濃密に描かれる。
「カオスですね。絵具で言ったらすべてのタッチが残っていて、塗りむらも含めてどこから見てもふーんと圧倒される絵画のよう」と堺が形容する赤堀ワールド。フィルムで撮影された映像の質感が、孤独や葛藤から生まれた二人の心の闇を絶妙に表現している。ぜひスクリーンで鑑賞してほしい一作だ。
「その夜の侍」は11月17日全国公開。
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