倉本總、原発再稼働に向けた動きに“覚悟”求める
2012年5月3日 19:30

[映画.com ニュース] 倉本總が1992年に執筆した脚本に手を加えて映像化し、昨年WOWOWの開局20周年を記念して放送されたドラマ「學」のDVD発売を記念し5月3日、東京・カナダ大使館で特別試写会が行われ、上映後に倉本が観客からの質問に答えた。
カナダのロッキー山脈で撮影が行われた本作。14歳で殺人を犯した少年が、祖父に連れて来られたカナダの壮大な自然の中でもがき、生きる意味を見出していく。“學”というのは主人公の少年の名前だが、あえて旧漢字を使用している点について「いまの時代と僕らの時代では“まなび方”が違うと感じています。昔流の教え方、学び方を表現したくてこちらの漢字を使いました」と説明した。
劇中、仲代達矢演じる學の祖父が切腹して果てるというショッキングなシーンがある。倉本は18歳のとき、同居していたおばが自宅で自殺し、その部屋に踏み込んだという生々しい経験を明かし「人間が死ぬというのは大変なものです」と言葉に力を込める。「19年前にこの脚本を書いたときはモルヒネで死ぬことにしていましたが、いまの時代、人間の死がゲーム感覚で軽く扱われている気がする。この祖父は學に“本当の死”を見せたかったと思ったので、あえて切腹という残酷な方法をとった。仲代さんも賛成してくださいました」と語った。
この「死が軽くなった」という風潮が、時を経て本作を映像化しようとする動機のひとつになったようだ。「楽しめればいいという風潮が進んで、倫理観がどんどん失われている。そのうち“津波ゲーム”が出てくるのではないかと危惧しています。そういう意味で、いまの時代の方がこの作品を『書きたい』という気持ちが強くなった。(作品が)19年前よりもいまの時代に合ってきてしまった」と残念そうな表情をのぞかせた。
自然と人間の関係というのは倉本の作品を貫く大きなテーマだが、東日本大震災の発生は改めて考えるきっかけとなった。震災から1年が過ぎ、原発の再稼働の是非が論じられているが、倉本は「いま、我々は2つの道の岐路に立っている」と語る。「いままでのような贅沢で恵まれた生活を続けるならエネルギーは必要だし、原発も必要。その覚悟があるのか? さもなければ暮らしを少しだけ元に戻すという道がある。1972年当時に戻ればエネルギーは現代の5分の2で済むようになるけど、経済力もGNPも落ちる。どちらの覚悟がいるのかということです」と問いかけた。自然とのかかわりを考え、身をもって示してきた77歳の言葉に観客はじっと耳を傾けていた。
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