森達也「ドキュメンタリーは化学反応」“先人”木村栄文氏に最敬礼
2012年2月20日 07:00

[映画.com ニュース] 作家・映画監督の森達也が2月19日、ドキュメンタリー作家・木村栄文氏の追悼上映イベント「公開講座 木村栄文レトロスペクティブ」が開催中の東京・オーディトリアム渋谷でトークショーを行った。
RKB毎日放送のディレクターとして、1970年代から90年代にかけて、独自のスタイルで多くのドキュメンタリーを製作。昨年3月に亡くなった“エーブン”こと木村氏の軌跡を、水俣病を題材にした「苦海浄土」(70)、閉山を控えた炭鉱を舞台にした「まっくら」(73)、近現代における日韓の関係性を考察する「鳳仙花 近く遙かな歌声」(80)など劇場初公開となる12作品でたどる。
木村作品の特徴は自由奔放な作風に加えて、ドキュメンタリーでありながら虚実入り乱れた構成にある。森監督も、オウム真理教(現アーレフ)を追った「A」(98)、「A2」(2000)といった作品で“主観”を貫く姿勢で注目を浴びたが、「当時は『ドキュメンタリーは主観だ』なんて言っていたが、はるか昔に栄文さんがやっていたじゃん(笑)」。同時に「『A』を作った後は無視されたり、怒られたり、ネットで批判されたり……。結構、チキンな性格なんで、栄文さんの存在は心強かった」と述懐した。
森監督にとってドキュメンタリーは「化学反応」だといい、「ビーカーの中の(取材)対象を揺さぶったり、加熱したり、ときには薬剤を入れるといった“演出”によって、その変化を観察すると、相互作用でこちらも変化してくる。見ていて面白いドキュメンタリーは、作っていて面白いドキュメンタリーだと思う」と持論を展開した。
3月には11年ぶりとなる新作「311」の公開を控える。綿井健陽、松林要樹、安岡卓治との共同監督作で、東日本大震災から2週間が経った被災地の様子をはじめ、森監督らが遺族や遺体を前に撮影をやめず批判を浴びる姿も収められた。
「遺族や地元の消防団に囲まれたときは『やっと怒られた』という変な安ど感があった。もし逆の立場なら、自分も絶対に怒っていたはず。それでもカメラを止めない矛盾やジレンマ、後ろめたさが作品のテーマになった。自分の仕事の負い目と宿命を見つめるのは、つらいことだが、避けちゃ意味がない」と熱弁。それでも「もし、栄文さんが見たら? きっと『普通じゃん』って言うと思う」と“先人”木村氏に最敬礼だった。
「公開講座 木村栄文レトロスペクティブ」はオーディトリアム渋谷で、3月2日まで開催。森監督の最新作「311」は3月3日から公開される。
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