水野美紀、園子温「恋の罪」で新境地
2011年11月11日 15:00
[映画.com ニュース] 鬼才・園子温監督が、大人の女性の性と自由を強烈なタッチで描き出した話題作「恋の罪」。女優の水野美紀が、幸せな家庭を持ちながらも愛人との関係を断てないエリート刑事を演じ、これまでにない新たな顔を見せる。世界的に注目される園作品への参加、そして初のヌードシーン……並々ならぬ意欲で撮影に臨んだ水野の、作品への思いとは?
以前より園監督の作品のファンを公言している。脚本を読み、前作「冷たい熱帯魚」とのテーマの違いは容易に比較できた。「『冷たい熱帯魚』が男の話だったので、今度は女の話なんだなと。実際の事件が下敷きになっていますが、それを使って女性の多面性、抱える闇や渇望……そういうものに焦点が当てられている話なんだとすぐにわかりました」。
女刑事・吉田和子という役柄を「愛人がいながらも、旦那さんや子どものいる家庭に不満があるわけではなくて……そこはリアルだなと思いました」と分析。同性として、そういった女性に反感を覚えることはないかと問うと「共感できないことはなくて、理解できます。『それが人間でしょ』って思います」。
渋谷のラブホテル街で起きた殺人事件の捜査を担当する吉田。吉田がスクリーンに登場するシーンでは、なぜかいつも雨が降っている。「きっと吉田という女が抱えている乾いた部分を象徴する雨だったと思うんです。ものすごい量を降らせたので、真冬の寒い中、ずぶ濡れになっていましたね」。
共演の神楽坂恵、冨樫真らとともにヌードシーンに挑んだことも話題となっている。女優という職業の前に、ひとりの女性としての葛藤などはなかったのだろうか。
「葛藤があるとすれば、いろいろと周りが騒ぐんだろうなっていうことくらいでした。この作品は、私のヌードが映っているからということを忘れてしまうくらい作品自体が力を持っているんです。監督は私のヌードを撮りたいわけではなく、(ヌードシーンは)物語を伝えるためのコマのようなもの。あまり周りのことを気にしないでやろうって思えたのは、園監督の作品だったからというのが大きいです。話題になることで、たくさんの人に見てもらえればいいと思います」と余裕の笑顔で話す。
完成作は「自分が脚本を読んでイメージしたものや、撮影現場にいて想像していたものと全然違うすごいものになっていたので、自分の想像が及んでいなかったのがちょっと悔しかったです」と明かす。
「描き方や切り取り方は、本当に園さんワールド。エンタテインメントとしてすごく面白くなっていますが、女性の渇望などの題材は普遍的なもの。園さんなりの表現でものすごく振りきって描かれているけれど、見た人誰もがそのテーマの根底にあるものを強く感じるんじゃないかなと思います」。
「恋の罪」は11月12日全国公開。