ベンダース監督が福島で上映会 「今回の訪問は最後の訪問ではない」
2011年10月28日 12:02
[映画.com ニュース] 2009年に逝去した天才舞踊家ピナ・バウシュさんの世界を、3Dで撮影したドキュメンタリー「Pina 3D ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」の日本公開に際し来日中のビム・ベンダース監督が、10月27日に同作の無料上映会を行うため、福島県を訪れた。
上映会前に、計画的避難区域に指定され、現在は無人となった飯舘村(いいだてむら)を訪問したベンダース監督。福島市の福島フォーラムでの舞台挨拶で「正直今まだショックを受けたままで何も言えません。目の前にあったのは美しい景色でした。そして香りも。本当に美しい新鮮な空気でした。アヒルの声も遠くから聞こえてきて。私の感覚/五感はここは天国のような場所であると言っていました。しかし、ガイガーカウンターが示している数字はその逆でした。私は映画作家であるのに、初めて自分の目が信じられないと思いました」と被災地の現実を目の当たりにしての心境を吐露した。
ベンダース監督は3月11日に起きた震災の直後に、福島フォーラムのホームページに「日本映画の巨匠達から多くを得て学んだ映画人として、そして日本文化の熱狂的なファン、友人として、日本を襲った困難に対してこれ以上ないほど打ちのめされています。可能な限り早くそちらに行って、映画を上映します」とのコメントを寄せており、25日に東京で行われた来日会見では「ピナの作品にはヒーリングの力があると思っています。東京で上映するのであれば、ぜひ福島でもやってほしいと私が頼んで話を進めてもらいました」と話していた。
上映会では、「私はどうしたらみなさんの助けになりますか?」と観客に問いかけ、「私はどんなことでも手助けをしたいと思っています。みなさんとの友情をここで築けたと思います。これは友情の第一歩です。今回の訪問は最後の訪問ではなく、第1回目の訪問です。これからもぜひ受け入れてください」とメッセージを送った。
原発事故による放射能の不安にさらされ、現在も家族が一緒に住めない状況であると話す参加者は「今日の映画のようなアートや身体の動き、きれいなものを通して、時間をかけて味わいながら考えていくことで、何か解決策が見えてくるのではないかと思うのです。この厳しい状況そのものを見つめるのも大事」と感想を述べ、「だから、あなたの仕事をそのまま続けることで、この事態をどのように受け止めて、あなたがどのように表現し、作品にするかを楽しみにしています。それを力にしたいと思っています」とベンダース監督の問いかけに答えていた。
「Pina 3D ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」は2012年2月25日全国で公開。