渡辺謙、東映版「はやぶさ」主演で日本人魂を届ける
2011年5月9日 04:00
[映画.com ニュース] 俳優の渡辺謙が、配給大手・東映が製作する「小惑星探査機はやぶさ 遥かなる帰還(仮)」に主演することがわかった。渡辺は5月8日、メガホンをとる瀧本智行監督、坂上順エグゼクティブ・プロデューサーとともに東京・銀座の同社で会見。製作費15億円の超大作となる同作で、JAXAの川口淳一郎教授がモデルの山口駿一郎を演じるとともに、同作のプロジェクト・マネージャーを務めることも明かされた。
昨年6月に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」が、2003年5月9日に打ち上げられてから8年。ハリウッドでの地位を不動のものとした渡辺が、「はやぶさ」をめぐる約7年間にわたる感動の実話に挑むことが発表された。渡辺は「奇をてらうことなく、『はやぶさ』が行って帰ってきたことに、きちんとフォーカスを当てていく。華美な脚色や横道に逸れることなく、真正面から向き合って描きたい」と覚悟をにじませた。
山根一眞の「小惑星探査機 はやぶさの大冒険」が原作だが、さらに50人以上の関係者に独自で取材し脚本に盛り込んだ。映画では、はやぶさの打ち上げから小惑星「イトカワ」への到着を経て、行方不明になりながらも満身創痍(そうい)のなか地球帰還を果たすまでを描く。また、幾多の困難に見舞われ、絶望感に打ちひしがれるプロジェクトチームを立て直す山口の姿をはじめ、プライドをもって仕事をする男たちを取材し続けるなかで親子のきずなを取り戻す女性新聞記者、若い技術者たちを底辺で支える町工場の老技術者たちにも焦点を当てる。
坂上プロデューサーは当初、渡辺に主演とともにエグゼクティブ・プロデューサー就任を打診したが、これを固辞された。渡辺は逆にプロジェクト・マネージャーという役回りを提案したといい、「このプロジェクトすべてに責任を取るということ。皆が同じほうを向いて何かをクリエイトできるのであれば、労は惜しみません」と説明した。
渡辺には、以前から危惧することがあった。「『沈まぬ太陽』のころから、この国のありよう、日本人のありようをもう一度定義すべきじゃないかと感じていた。今回の東日本大震災で、それが大きく突きつけられたように思う。見ないふりをするのではなく、これを契機にいろんな情報や思考のなかから定義を見出していかなければならないのではないか」と真しな眼差(まなざ)しで語った。
だからこそ、「誰よりも日本の皆さんにこの作品を届けたい」という思いを強く抱いている。「日本が試行錯誤するなかで、誇りをもって仕事をしている技術者がいるんだということを、まず日本の観客に伝えていくことが大きな命題」と言葉に力を込める。
共演陣は後日発表となるが、坂上プロデューサーは「謙さんとガチで組んでスクリーンに火花が散るような俳優さんを選んでいる」とニヤリ。撮影に際し、全キャストが専門知識を体得する必要があるため、5月20日の実写部分クランクインまで技術的なリハーサルを行う。CGは東映アニメーションが作業を開始しているほか、JAXAの指導のもと、5メートル50センチのはやぶさの実物大モデルを3体制作中。7月中旬に海外ロケを敢行し、12月に完成予定だ。
「小惑星探査機はやぶさ 遥かなる帰還(仮)」は、全国300スクリーン規模で2012年公開。
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