竹野内豊が「太平洋の奇跡」で日本人に伝えたいこと
2011年2月10日 08:21

[映画.com ニュース] 竹野内豊の約3年ぶりとなる主演映画「太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男」が、2月11日に公開される。日米開戦70年特別企画として、元米海兵隊員ドン・ジョーンズが発表した「タッポーチョ『敵ながら天晴』大場隊の勇戦512日」を映画化。竹野内が演じた大場栄大尉は、太平洋戦争の激戦地サイパン島で、わずか47人の兵力で4万5000人もの米軍を神出鬼没な戦略で翻ろうし、“フォックス”と畏敬の念を込めて呼ばれた大場栄大尉に扮した竹野内に話を聞いた。
大場隊の戦いぶりに強い感銘を受けた原作者のジョーンズは、戦後に来日し取材を重ねて同書を書き上げた。あとがきには、「多くの人たちが、自分たちの父や祖父や叔父たちが国を守るために戦った精神について何も知りませんでした。もっと驚いたことは、その人たちがしたことに何の尊敬の念も払っていないことです」と記されている。竹野内をはじめ、同作にかかわったすべてのスタッフ、キャストが伝えたかったことは「日本人の誇り」だと断言できる。
竹野内も原作を読み、あとがきに強い印象を抱いている。「ジョーンズさんも書かれていますよね。日本人は戦争に負けたということを恥じる気持ちでいるかわからない。でも、恥じる気持ちは知識の欠如だって。世界中の戦士のなかで、日本軍の兵隊は本当に優秀だった。その人たちが全力で戦った誇りを、決して忘れてはいけないんです」。そう語りながら、遠くを見つめるような眼差(まなざ)しで祖父との思い出を訥々(とつとつ)と話し始めた。「自分も子どものころ、おじいちゃんに戦争のことを聞いてみたいと思った時期があったんですよ。『おじいちゃん、戦争って怖いの?』とストレートに質問したら、『戦争か。そりゃ良いもんじゃないなあ。ははは』と笑って流されました。子どもながらに『これ以上、聞いちゃいけないのかな』と感じました。そういう経験って自分だけではなくて、聞きたかったけれども聞けなかった人っていっぱいいるはずなんですよ」
だからこそ、21世紀を生きる今の世代の日本人は、いつの間にかどこかに置き忘れてきてしまった日本人としての誇りを忘れてはならない。「自分たちのルーツをたどれば、どこかであの方たちの遺伝子であり、日本人としての誇りって眠っているはずだと思うんです。タイで一緒に過ごした兵隊役の役者さんたちって、すごく若いのに日本人としての強いスピリットをもっているんですよ。だから、忘れているわけではない。自分たちに備わっているということに、自分を含め気づいていないだけなのだと思いました」
劇中では、テレビドラマ「不毛地帯」に続き、事務所の先輩である唐沢寿明と共演。唐沢もまた米軍から“サイパンタイガー”と呼ばれ恐れられた堀内今朝松一等兵を演じるにあたり、スキンヘッドにしてラヨーン入りした。現場で、「ゼロからの覚悟だね、タケ」と熱く語りかける姿が2人の強いきずなをうかがわせたが、互いに際立った役づくりはしなかったという。「現場に行ってみて、とてもじゃないですが脚本に描かれている部分だけでは埋め尽くせないものが多かったんです。だから、現場で感じる気持ちはなるべく取り入れるようにはしていましたね。唐沢さんも『とにかく、やってみないと分かんないよな。頭で考えても、このシーンは分かるもんじゃないから』っておっしゃっていました」
撮影では大場大尉が憑依(ひょうい)したかのような立ち居振る舞いで、見事に“座長”としての役割を完遂。竹野内が最も大切にしたシーンが、クライマックスに用意されている。投降後、米軍のジープに乗りながら敵だった相手に対し「ただ無心に戦っただけ。私はこの島で、ほめられるようなことは何もしていません」と語っている。「脚本を読んでいて、非常に重要なシーンだとずっと思っていたので、セリフとして大切にしたいなと思いました。あの場面はスケジュールをうまく調整してくれて、最後に撮りました。そこにいたるまでのいろいろな気持ちが集約されていますが、余計なことは何も考えずに現場にいきましたね。大場さんの大尉として最後の姿だからこそ、すごく大事にしたいシーンでした」
今年、竹野内は不惑を迎える。今作を通して伝えたかった「日本人としての誇り」を、丁寧な演技で映画に詰め込み、新たな一歩を踏み出した。「とにかく学生さんや若い人たちに見てもらいたい」と願う気持ちが結実したとき、戦争という悲劇で命を落としたすべての日本人が、天国から“誇り高き後輩たち”へ喝さいをおくるに違いない。
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