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若者たちの愛情の移ろいをビデオカメラで切り取ったロウ・イエ監督

2010年11月12日 18:07

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来年は母国で映画を撮ります
来年は母国で映画を撮ります

[映画.com ニュース] 中国ではタブーだった天安門事件を題材にした前作「天安門、恋人たち」(06)を製作し海外で上映したことにより、中国政府から5年間の映画製作・上映禁止処分を受けた鬼才ロウ・イエ監督の新作「スプリング・フィーバー」が公開中だ。同作は、現代の南京を舞台に男女5人の恋愛模様を描いた青春群像劇。中国ではいまだタブーとなっている同性愛者の恋愛をとりあげ、09年のカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した。

「最初は同性愛をとりあげるつもりはありませんでしたが、脚本家のメイ・フォンと議論していくなかで愛の範囲をもっと自由に大きく考えるようになりました。ただ、それは過激な性描写を描きたかったということではなく、人と人との間の身近な日常を描いた純粋なラブストーリーにしたかったからなのです」

中国の一般商業映画館での作品上映は禁止されていたが、映画製作自体は政府当局の許可を得なくても可能なため、香港とフランスからの資金援助を受け、国外向けに製作された。だが、大きな予算は組めないので、イエ監督自身、劇場用映画としては初めて家庭用ビデオカメラを使用しゲリラ的に撮影を行った。

「以前からビデオカメラでの撮影には興味があったのでちょうどいい機会だったんです。実際に使ってみると、やはり便利で、安上がりだったのでとても助かりました。そして何よりも俳優たちの演技の方法を大きく変えることが出来ました。俳優に意識させずにより近くに密着してクローズアップの映像を撮れたことは、大きな収穫でしたね。総合的に考えて、家庭用ビデオはこの映画にとてもあっていたと思います」

劇中では、ビデオ撮りの大胆ほん放な映像のなかに「」のイメージが至るところで登場し、若者たちの愛情の移ろいとともに現代中国の繁栄を映し出している。

「愛という感情が高まるさまと、が咲きほこる姿はとても似ているように思います。ただ、愛もも一番美しく見えるときが終わりの始まりでもあるんですよね。人間や我々の住む社会もそれは同じ。繁栄するときがあれば、衰えるときもある。劇中の最後のほうに『花はもう枯れるだろう』という詩の一句が出てきますが、それはまさに我々の運命を物語っているのです」

同作のストーリーのモチーフとなった短編小説「春風沈酔の夜」を書いた中国の小説家・郁達夫(イクタップ)は、日本、香港、シンガポールへとわたり歩く、まさに漂流者というべき人生を送ったが、現在、ヨーロッパと中国を行き来するイエ監督自身もそういう生き方を望んでいるのだろうか。

「郁達夫は本当の意味でさまよい人でしたが、僕自身はそういう風になりたくないし、家に帰りたいです(笑)。来年は5年の製作禁止期間が過ぎてようやく中国で正式に映画が撮れるようになります。ただ、そうはいっても将来がどうなるかなんて誰にも分かりませんけどね」

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