川島透監督、新作準備に余念なし
2010年10月2日 15:38
川島監督は、83年に故金子正次脚本・主演の「竜二」でデビュー。その後、「チ・ン・ピ・ラ」「野蛮人のように」「ハワイアン・ドリーム」など、70年代に隆盛を誇った東映実録ヤクザ映画とは全く異なるタイプのアウトロー映画を次々と発表し、80年代の日本映画界に新風を吹き込んだ。だが、94年の「押繪と旅する男」を最後に、劇場用長編映画を撮っていない。
「製作委員会方式が80年代後半から日本映画の主流になり、違和感があった。それに、求められる映画も変わった。この16年の間に幾度か監督の話をもらって途中まで進めたが、結局は流れてしまった」
そんななか、昨年60歳を迎えたのを機に東京から福岡に帰郷。すると、再び「映画を撮りたい」という気持ちがふくらんできた。
「まず生活が変わった。朝は早起きで、体調もかなり良くなった。そして何よりも物の見方が変わった。東京にいると、流行など余計なことを考えてしまうが、こちらに来てみると、そういったことがどうでもよくなってしまった。すると、自分のなかで映画というものが自然と大きな存在になり、実際、東京にいたときよりも映画を多く見るようになった。若いころは生意気にも映画監督だけでは満足できないという思いがあったが、今は映画監督として人生を全うしたいと思う」
現在は、作家・矢作俊彦の著作「犬なら普通のこと」の映画化を準備するほか、矢作との共作で映画の土台となる時代小説を執筆中だという。
「今の邦画は閉じた世界を描いた映画が多すぎる気がする。映画にリアリティは欠かせないが、僕らが日々呼吸している日常から大きく逸脱する人間を描くのが娯楽映画の醍醐味。日常から逸脱した上でのリアリティを描くことこそ僕は面白いと思う。そういった娯楽映画を作れるよう、準備だけはしています」
同映画祭では、小説家の桐野夏生、島田雅彦ほか、「チ・ン・ピ・ラ」などで製作に携わったプロデューサーの河井真也らと川島監督のトークショーも行われる。