井筒和幸、絶望と孤独に振り回される現代の若者に警鐘
2010年5月25日 16:33
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[映画.com ニュース] 「ガキ帝国」「パッチギ!」の井筒和幸監督、3年ぶりの新作「ヒーローショー」が5月29日から公開となる。「パッチギ! LOVE&PEACE」(2007)以来3年ぶりとなる長編は、子ども相手のヒーローショーのアルバイトをする若者たちが思いもよらないことから事件に巻き込まれ、取り返しのつかないスパイラルに落ちていく姿を描いた異色の青春バイオレンスだ。
「日本の文化において、これほど傑出した輸出文化は5人組が活躍するヒーローショー以外にありませんよ。愛と正義をうたってばかりいる5人組が、マスクをはずしたとたん、仲間割れし始めたらどうなるだろって、プロデューサーらに話したら、面白いって。それで脚本を作り始めました」
そう語る井筒監督だが、そのアイデアの根底には、短絡的な動機で暴力をふるい、命を粗末に扱う若者たちと、それをすぐに流してしまう社会への強い怒り、そしてもがき苦しんでいる若者のリアルを伝えていない昨今の日本映画への憤りがあったようだ。
「今の若者のリアルを描いている作品って実はないと思う。TVやゲームで描かれることがバーチャル化している世の中なのでありのままを描きたかった。実際に、最近は地に足が着かないまま生きている若者がとても多い。ちょっとしたことでケンカして興奮してしまい、殺し合いにまでなってしまう。そして、事が大きくなったらなったでお互いになすりつけ合う。だけど、そういった衝動暴力がはびこる今の社会は、我々大人が作ってしまったものなのに、居直って生きている人間が多すぎる。だから、この映画では絶望と孤独に振り回されざるを得ない、この世のリアルを捉えようと思いました」
これまでにも暴力を描いた作品をいくつも撮ってきたが、「いままでは自分で制御していたところがあるが、今回はリミットを作らずとことんまで追求した」と井筒監督自身が語るとおり、本作ではリアルかつ痛い暴力が印象に残る。
「若者が発するひとつの言い分としての暴力。分かってくれよという暴力。いままではそういった爽快感や共感を伴う作品が多かったが、今回はとどまることのない不条理な暴力、ただ痛いだけの作品をどうしても描きたかった。そして、そういった暴力は今の時代の無意識、閉塞した社会の影響下にあるということを伝えたかったんです」
また、本作は人気お笑い芸人のジャルジャル(後藤淳平、福徳秀介)が映画初出演にして初主演を務めていることも話題。井筒監督としては、「ガキ帝国」の紳助・竜介(島田紳助、松本竜介)、「岸和田少年愚連隊 BOYS BE AMBITIOUS」のナインティナイン(岡村隆史、矢部浩之)に続いての吉本芸人コンビの主演起用となった。
「ジャルジャルの2人は芸人という下地があるので極めて自然な演技をしていた。最近はかっこつけの演技をする役者が多いが、彼らは画面の前で格好つけないのでリアルさがより出ていたと思う。とにかくイケメン俳優を使っての軽い暴力映画とは一線を画したかった。ぽっと出の俳優はすぐ良い人になろうと演じてしまうけど、2人は素直に演技してくれたよ。吉本の芸人が出ているからといってコメディ映画だと思って見たら大間違いですよ」
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