ジャーナリスト澤地久枝が、沖縄返還の「密約」にこだわる理由
2010年3月30日 18:46
[映画.com ニュース] 1971年の沖縄返還協定締結時に起こった外務省機密漏洩事件を描いたTVドラマ「密約 外務省機密漏洩事件」(78)が、22年振りに劇場でリバイバル上映される。これを受けて3月30日、東京・新宿の新宿武蔵野館で原作の著者である澤地久枝がトークショーを行った。
千野皓司監督がメガホンをとった同作は、沖縄返還費用を日本政府が肩代わりするという日米間で交わされた密約の事実とその政治責任が、密約をスクープした新聞記者と情報提供者である外務省女性事務官との男女の問題にすり替えられた実話に基づく社会派ドラマ。1978年にテレビ朝日開局20周年記念番組として製作されたが、88年に一部の劇場で映画として公開され、モスクワ国際映画祭に出品された。
今年80歳になるノンフィクション作家の澤地は、「『密約』は私の2冊目の本なのですが、戦争で負けたことのツケがどう回るのか、本当に罪に問われるべきは誰なのか、主権者に考えてほしいという思いで書き上げました。国家機密がまんまと男女の関係にすり替えられたのです。今後の歴史のためにも政治責任を裁く法律が必要だと思います。主権者に知る権利ではなく、政府に知らせる義務があるのです」と強調する。また、「昨年、我々は政権交代を達成しました。民主党がヨロヨロしているとしても、岡田(克也)外務大臣が表明した本事件に対する真相解明の姿勢を、きちんと見守らないといけない。弱体な政府は、弱体した主権者のもとにあるんです。私たちが強くなる以外に道は開かれていかないと思います」と語りかけた。
そして、澤地は「私はいまだ何10年も怒り続けています。沖縄返還、つまりは第2次世界大戦の財務整理がどういう形で終始したかを私たちが追求できる唯一の争点が、日本政府が肩代わりした400万ドルの『密約』なんです。自分でも執念深いなと思いますが、私はこの『密約』にこだわり続けます」と涙目で訴えていた。
「密約 外務省機密漏洩事件」はアニープラネット配給で、4月10日から全国で順次公開。