「E.YAZAWA ROCK」監督が語る矢沢永吉の魅力とは?
2009年11月27日 19:36
[映画.com ニュース] 今年還暦を迎えたロックシンガー矢沢永吉の半生を追ったドキュメンタリー映画「E.YAZAWA ROCK」が公開されている。本作のメガホンをとったのは、「チ・ン・ピ・ラ」「ロックよ、静かに流れよ」「ラヂオの時間」などで知られるベテラン映画プロデューサーの増田久雄。約30年前に公開されたドキュメンタリー映画「矢沢永吉 RUN&RUN」(80)のプロデューサーを務めた増田監督が、07年に矢沢と久しぶりの再会を果たしたことから本作の企画がスタートした。
「『RUN&RUN』を作った後10年くらいはよく会っていたけど、その後の20年はまったく会っていなかった。そこで連絡を取って久々に会ったら『RUN&RUN』を見たくなって試写室を借りて一緒に見たわけです。するとスクリーンの中には30歳の矢沢がいて、僕の隣にはもうすぐ60歳の矢沢がいる。そのときに、30歳の矢沢はもちろんかっこいいけれど、60歳の矢沢のほうが男としてもっとかっこいいのではないかと思ったんです。そして、これは一体どういうことなんだという疑問がわいてきた。それを探りたい一心で撮り始めました」
カメラを回し始めたのは再会してから数週間後の07年9月。だが、矢沢が真剣に映画を意識しだしたのは公開が近づいた08年になってから。矢沢の「もう1年撮り続けて欲しい」というオファーに、同年秋に公開するつもりだった増田監督は苦しんだ。
「矢沢は『もう1年』って言うけれど、映画は公開するまでに劇場のスケジュールから宣伝まで、いろいろと準備があるから、こちらはそう簡単に決められない。それでプロデューサーとしての自分と監督としての自分の闘いがあったわけです。最終的には監督としての立場から撮影を延長したわけだけれど、それは矢沢が『まだ自分を十分にさらけ出してない』と言ってくれたから。本気の矢沢永吉を受け止めなければ、いい映画になるわけがないですからね」
前作「RUN&RUN」がオンステージを中心に見せる構成だったのに対し、今回はレコーディングやライブのリハーサル、インタビューなど、オフステージを中心とした素顔の矢沢永吉に焦点を当てている。
「意識したのは『RUN&RUN』や毎年リリースされるライブDVDとの差別化。『RUN&RUN』の頃はビデオもDVDもなかったから、矢沢のライブは会場に行って見るしかなかった。だからライブを中心に見せていけば成立したわけです。だけど今度のお客さんの大半はDVDでライブを見ている。だとすれば、矢沢の音楽やライブパフォーマンスではなく、彼の哲学や生き様を見せていく内容にしたほうがいいと思ったんです」
出会ってから30年。2度の映画製作を経て増田監督が感じた矢沢永吉の魅力とは?
「一言でいうと、純粋ということです。矢沢永吉が音楽に対して純粋であるということは、生きていくことに対して純粋ということですからね。その純粋さがあったから、彼は30年間トップに君臨できたのだと思います」