「今回で辞めても悔いはない」角川春樹が背水の陣で臨んだ「笑う警官」
2009年11月20日 18:41
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[映画.com ニュース] 北海道で実際に起きた警察の汚職事件を基に、汚名を着せられた同僚の容疑を晴らすために奔走する刑事たちの活躍を描いた佐々木譲の同名ベストセラー小説を、あの角川春樹が映画化した「笑う警官」(公開中)。「REX 恐竜物語」(93)以来、15年ぶりにメジャー作品のメガホンをとった角川監督だが、当初は製作のみで監督まで務めるつもりはなかったという。
「実は監督することに決めたのはクランクインの3週間前だったんだ。相手の仕事もあるから名前までは挙げられないんだけど、降板してもらった監督とはシナリオの方向性から作品に対する考え方まで、何から何まで違った。拳銃を口の中に入れて自殺する警官の血の撮り方だとか、そういった類のことばかり気にしているので、おしゃれに撮りたかった私の考えとは真逆で、製作現場や配給側からも不安の声が上がったんです。結果、監督、脚本家、数名のキャストが降板する緊急事態となり、ここはプロデューサーの私が監督をするしかないと腹をくくりました」
だが、ここからが大変で、3週間後に迫ったクランクインまでに、キャスティング、シナリオの改稿、衣装合わせなどをやりつつ、プロデューサーとして出資者も回った。
「とにかく無茶苦茶な状態だったね。この話を原作の佐々木さんにしたら、『笑う監督』というタイトルで1本映画を撮れるなんていって笑ってたよ(笑)」
本作の製作発表会見で「警察の闇を描けるのは、逮捕経験のある私をおいて他にいない」と語っていた角川監督。このストーリーに惹かれたのは「警察組織対警察個人の戦い」を描いていたからだという。
「かつて通商産業省にいた作家の堺屋太一さんが、官僚組織について『個人では優秀で志のある人間はいるかもしれない。だが、組織となったときに、これほど冷酷で残忍で傲慢なものはない』と言っていたんだけど、これは彼が所属していた組織だけでなく、そのまま警察組織にもあてはまるわけです。今回の作品の背景となった北海道警の裏金事件をはじめとする数々の不祥事を見ても分かるように、警察っていうのは散々なことをやっているんだよね。この警察組織対警官個人という構図はこれまでの警察小説では扱われてこなかったわけで、もちろん映画にもなってなかったんだ」
05年、戦争大作「男たちの大和」で映画製作者として復活を果たしてから4年。今回は150万人以上動員できなかったら引退すると発表し、背水の陣で臨んでいる。
「これは書籍についても言えることなんだけど、日本だけに限らず、世界的に幼稚になってきてるよね。なにしろ漢字も読めない人間がこの国の総理大臣をやってたわけだからね。TV局の毒にも薬にもならないドラマを映画化して、客が動員できたことを喜んでいるのをみていると、映画の底力を信じて、まっとうに作っている自分たちが馬鹿に見えるんだよ。だから、今回150万人を動員できなかったら辞めても悔いはない。ここはきちんと、自分の勝負をかけて、今後のことはその結果が出てから考えればいいと思っているんだ」
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