金獅子賞はイスラエル映画「レバノン」、塚本&ムーアは無冠。ベネチア映画祭閉幕
2009年9月14日 12:00
[映画.com ニュース] 第66回ベネチア国際映画祭が9月12日(現地時間)に閉幕し、受賞結果が発表になった。最高賞の金獅子賞に輝いたのは、一部で下馬評の高かったイスラエル映画「Lebanon」。レバノンに侵攻するイスラエル軍の戦車の中で起こるドラマと戦車から見える風景で構成した、緊張感あふれるビジュアルと政治的テーマ性が評価された形となった。
審査員特別賞に輝いたファティ・アキン監督の「Soul Kitchen」と、銀獅子監督賞に輝いたイラン映画「Women Without Men」(音楽は坂本龍一)もともに人気の高かった作品だ。アキンはこれまでの作風とは異なるコメディだが、審査員長のアン・リーは、「嫉妬したくなるほどうまくできている。映画祭では往々にしてコメディが低く見られがちなので、正統な評価を与えたかった」と語った。一方イラン映画「Women Without Men」のシリン・ネシャット監督はこれが初監督作。1953年に起こったイランのクーデターを背景に、女性の視点からフリーダムとデモクラシーの希求を詩的に描いた。
映画祭終盤を湧かせた世界的ファッションデザイナー、トム・フォードの初監督作「A Single Man」は、ホモセクシャル役を演じた主演のコリン・ファースが満場一致で最優秀男優賞に。女優賞は、イタリア映画「La Doppia Ora」のクセニア・ラポポートが最優秀女優賞、新人俳優に与えられるマルチェロ・マストロヤンニ賞にイタリアの重鎮ミケーレ・プラシドの「Il Grande Sogno」に主演したヤスミン・トリンカと、ともにイタリア女優がさらった。
話題性のあったマイケル・ムーアや日本から唯一コンペに参加した塚本晋也は残念ながら無冠に。全体的にはインディペンデントな作品に光を当てながらバランスよく賞を配した、驚きの少ない受賞結果となった。
また一昨年、第1回目の受賞者に北野武が輝いた監督ばんざい賞を、今年は「ロッキー」シリーズや「ランボー/最後の戦場」の監督としても知られるシルベスター・スタローンが受賞。閉幕セレモニーに出席し、「信念を持って自分のやりたいこと、語りたい物語を撮ることが大切」と後年の若手監督たちに対するメッセージを述べて、賞を締めくくった。
▽審査員特別賞 「Soul Kitchen」(ファティ・アキン監督)
▽銀獅子監督賞 シリン・ネシャット、「Women Without Men」
▽最優秀男優賞 コリン・ファース、「A Single Man」
▽最優秀女優賞 クセニア・ラポポート、「La Doppia Ora」
▽オゼッラ賞(最優秀脚本賞) トッド・ソロンズ、「Life During Wartime」
▽オゼッラ賞(最優秀プロダクションデザイン賞)/シルビィ・オリべ、「Mr. Nobody」
▽マルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人俳優賞) ヤスミン・トリンカ、「Il Grande Sogno」
▽監督ばんざい賞 シルベスタ・スタローン