「わが教え子、ヒトラー」の監督が語る、映画のリアリティ
2008年9月5日 12:00

[映画.com ニュース] 第2次大戦終戦間近のドイツ・ベルリンを舞台に、うつ病から引きこもりとなってしまったアドルフ・ヒトラーと、彼に演説指導をするように命じられたユダヤ人教授グリュンバウムの奇妙な関係を描いたコメディ「わが教え子、ヒトラー」。本作の日本公開を前にスイス出身のユダヤ人監督ダニー・レビが来日し、インタビューに応じた。
本作は実際にヒトラーに演説を指南したポール・デブリエンという実在の人物の手記をもとにレビ監督自身が脚色した作品。久しぶりに再版された原作を読んで、すぐに映画化を思い立ったという。「ヒトラーに演説の教師がいたという事実はもちろんあまり知られていないことで、私自身も本当に驚きました。普通ヒトラーについては、皆が自然と生まれた天才のように考えるわけですが、実際には彼にも演説のコーチがいたという事実は既成概念を覆すようなことだったんです」
脚色する際に、デブリエンをユダヤ人教授に書き換えるなど、意識的に史実とフィクションを融合させたというレビ監督だが、そこにはどういった意図があったのだろうか。「歴史を題材とした映画の場合、たいていの映画監督は当時のリアリティをリアリスティックに再現しようと試みる。つまり、戦争やホロコーストといったものをそのままコピーしようとするわけです。もし、その試みが成功すれば限りなくリアリティに近づくわけだけど、私にはそれ以上のものになるとは思えない。歴史をそのまま再構築することは不可能なわけですから。そういった理由から、私はこの映画を作る際には、創作を加えて、現実とは別のレベルのリアリティを作らなければならないと思ったんです。やはり映画というのは、あくまでも芸術であって、現実の幻想でいいと思います」
そんな本作を作る上で欠かせなかったのが、ユダヤ人教授グリュンバウムを演じた名優ウルリッヒ・ミューエの存在。アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「善き人のためのソナタ」(06)で知られるミューエは昨年7月に胃ガンのため急逝、本作が遺作となった。「加害者を笑いものにすることはあっても、被害者を笑いものにすることは絶対やってはいけないことだと思ってました。そういった意味でグリュンバウムを演じたウルリッヒ・ミューエには感謝しています。彼が喜劇の中での悲劇的な役という複雑かつ難しいやくどころを見事に演じてくれたおかげで、この映画に絶妙なバランスが生まれたんです。観客には知的で多面的でどこか滑稽な彼の演技を楽しんでもらいたいですね」
「わが教え子、ヒトラー」は6日よりBunkamuraル・シネマほかにてロードショー。
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