日本人も知らない日本の選挙運動の実態「選挙」
2007年6月8日 12:00

日本の政界が“小泉劇場”真っ只中だった05年秋、自由気ままに切手コイン商を営んでいた“山さん”こと山内和彦は、ひょんなことから自民党公認候補として川崎市宮前区の市議会議員補欠選挙に出馬することに。果たして山さんは当選できるのか?―― 政治の素人が選挙戦を戦っていく様を捉えたドキュメンタリー映画「選挙」が、間もなく公開される。本作で監督・製作・撮影・録音・編集を全て1人で行った想田(そうだ)和弘監督と、監督の友人で選挙を戦い抜いた御当人である山内和彦氏に話を聞いた。
想田監督と山内氏は東京大学在学時の級友で、監督が活動の拠点をニューヨークに移してからもお互いに連絡を取り合う仲だったそうだ。監督は今回の映画化の経緯について、「たまたま川崎に遊びに行った僕らの共通の友達が、山さんのポスターを目撃して、それをデジカメで撮って僕に送ってきたんです。その写真が本当におかしくて(笑)、すぐに山さんと自民党に頼んで撮影させてもらうことにしました」と振り返る。また、山内氏に自身の選挙運動が映画化された感想を聞くと、「撮影中はこれが本当に映画になるのか?と思っていたので、昨年9月にベルリン映画祭に招待された時はすごく驚きました。日本公開は勘弁と思ってたけど公開されちゃいますね」と苦笑いしながら答えてくれた。映画は山内氏の奮闘記であると同時に、「電柱にもおじぎせよ!」を合言葉に戦う“ドブ板選挙”と呼ばれる旧態然とした日本の選挙の本質を浮き彫りにしている。
「選挙」はナレーションや音楽が一切なく、見るものに解釈を委ねる“観察映画”だという。監督と山内氏に、“観察する側”と“される側”それぞれの視点で見た日本の選挙制度について語ってもらった。「やはり撮影前とは選挙に対する見方が変わりました。海外の映画祭でも指摘されましたが、選挙カーで名前を連呼することが、本当に得票に繋がるのかという疑問もありますし、多数派(与党)に有利な公職選挙法も問題だと思います。そもそも公職選挙法自体を制定するのが与党ですから、難しい問題なんですけどね」(想田)、「今の公職選挙法の下では、無所属の候補や新人は圧倒的に不利で、誰もが立候補できて当選する可能性がある制度ではないんです。この映画が問題提起になり、20~30年後に『昔の選挙はこんなことをやってたのか』と語り草になればいいですね」(山内)
「選挙」は6月9日より公開。
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