「「ダークマイト」という話題性を超えられなかった作品」僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト ひろさんの映画レビュー(感想・評価)
「ダークマイト」という話題性を超えられなかった作品
全体を通して先の読める展開が続くので退屈に感じた。ゲストキャラの関係も予告編で推察できる以上のものはなく「ダークマイト」というキャラクターの話題性によって上がった期待値を超えるものでは無かったという印象。
アニメの時系列が最終決戦直前ということでいろいろと無理をさせられないのは理解できるが、わざわざその時系列でやって制約が出るくらいなら原作と同じ時系列(最終決戦終了後)で作った方が良かったのではないかと思う(ヒーローズ:ライジングの前例があるため不可能ではないはず)。
アニオリ映画にどこまで求めていいのか悩みどころではあるが、ストーリーはもう少しやりようがあったのではないかと思う。ジュリオとアンナの恋模様、ダークマイトや適合者幹部との戦闘、プロヒーローの活躍など詰め込みすぎて全て中途半端になっていると感じた。
特にダークマイトはジュリオとアンナの関係を描くために中身を描く尺を奪われたのではないかと思うくらいの何もなさ。過去にオールマイトと関りがあったとかでもなく、ぽっと出のイタリアンマフィアで、解像度の低い「平和の象徴像」を語ってみんなから総突っ込みされている始末。
なぜオールマイトが力だけで平和の象徴だと呼ばれていると解釈したのだろう。AFOを倒した動画を見てそう思ったのかもしれないが、イタリアではその動画しか配信されてないのか?オールマイトのデビュー動画は見たことがなかったのだろうか。
「次は君だ」を自分に向けられたものだと受け取った深い理由なども特にないので本当に変なやつでしかない。子供の頃に「僕もオールマイトみたいになります!」「そうか!頑張ってくれ!!」みたいなやり取りがあっただとかそういう一幕もない。
おそらく意図して中身がない憎たらしいだけのキャラクターを描いているのだろうが、子供だましもいいとこだ。ステイン並にオールマイトに狂っているようなキャラクターを期待していただけに(ステインと言うキャラがオールマイトをオリジンとする敵として完璧だったのもあって)ここは受け入れ難い部分だった。
幹部も雑に、しかも大半が意外性のないゴリ押しで倒されていくので存在の必要性を感じない。作画の迫力に任せすぎ(デボラ姐さんはえっちでよかったけどね)。幹部の人数をもう少し削ってダークマイトのバックボーンをもう少し肉付けして、せめて動機に納得させてくれればもう少し楽しめたと思う。
後は『「個性の無効化」だと強すぎるから「個性因子の相殺」にしたんだろうけど、そんなピンポイントな個性が個性因子を流し込む個性に対応するように生まれてるの都合よすぎるだろ』とか『何年も過ごしててなんで今更適合者になったんだよ』とか『尾白の見てる夢なんだこれ』とかいろいろ突っ込みどころはありますが全部放棄します。
総じて夏休みの子供向け映画だったな、という感じ。原作のようなストーリー、ヴィランのバックボーン等を期待していると楽しめない。作画は良質だったので映画館で見る価値はあると思うが、配信になってから見ると多分7割くらい魅力が減ると思う。