劇場公開日 2024年2月2日

「ほっこりした日常をまったり楽しめます」大室家 dear sisters おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ほっこりした日常をまったり楽しめます

2024年2月3日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

単純

幸せ

本作は、漫画「ゆるゆり」のスピンオフ漫画「大室家」の劇場アニメ化作品です。原作未読ですが、以前にテレビアニメ「ゆるゆり」1期を観ておもしろかった印象があり、先に観た「ダム・マネー」のあとにまだ時間があったので、本作を鑑賞してみました。

ストーリーは、買い置きおやつの盗み食い、漫画のネタばらし、友達との交流など、大室家の撫子、櫻子、花子の三姉妹の学校や家での何気ない日常から、それぞれの人柄や姉妹の仲のよさを描くというもの。テレビアニメの記憶が曖昧なのですが、櫻子は脇キャラだったと思います。そこにスポットを当ててはいますが、「ゆるゆり」らしい雰囲気は感じることができます。

というわけで、櫻子の学校での様子を描くと「ゆるゆり」メインキャラと絡んでしまうので、本作では主に撫子と花子のショートエピソードの積み重ねで展開し、そこに櫻子が絡んでいくという構成になっています。したがって、全体を貫くストーリーは存在せず、仲よし三姉妹のほっこりした日常を見守りながら、ただただ癒されるまったりタイムを楽しむ作品であると言えます。

映像的には、オープニングこそ実写背景にキャラを重ねる工夫を感じたものの、他に特筆すべき点はないように思います。でも、もともとギャグ寄りのほのぼのアニメなので、このクオリティでなんの不満もありません。そんな感じで、ストーリーも映像も劇場版ならではの特別感はなかったのですが、この世界観が好きなら楽しめるのではないかと思います。

しかし、正直言ってテレビアニメ「ゆるゆり」ほどのおもしろさは感じませんでした。笑えるシーンはあるのですが、どれもありきたりで先が読めてしまうのは残念です。「ゆるゆり」は、個性の強いメインキャラが、はっきりした役割分担の中で見せる掛け合いがおもしろかったので、本作の三姉妹と比べること自体が間違っているとは思いますが、それでもやはり物足りなさは残ります。もちろん、笑いの中に三姉妹の絆を感じさせるというアプローチは悪くないんですけどね。

それにしても、この手の作品は“特別興行”と銘打って強気の料金設定をしてくることが多く、本作もそうなのですが、これはファンの裾野を広げることの妨げになっている気がしてなりません。本作は小中学生でも楽しめる内容だと思うのですが、私と同じ上映回の観客は15人前後で、すべて成人男性でした。おそらく「ゆるゆり」ファンではないかと思われます。別にマニアックな作品でもないのに、コアなファンだけを対象にしているような印象を与えているようでもったいないです。どうやら次回作もあるようですが、おそらく今回同様の興行となるでしょう。大きなお友達だけをターゲットにした方が儲かるんでしょうかね。

キャストは、テレビアニメ「ゆるゆり」に続き、櫻子役を加藤英美里さん、撫子役を斎藤千和さん、花子役を日高里菜さんが務めます。戦場ヶ原ひたぎを思わせる、ドSとキュンの振れ幅で魅せる斎藤千和さんの声が耳福です。

おじゃる