劇場公開日 1946年

「計算され尽くした疑惑の醸成速度や心理作用が魅せるヒッチコック・ミステリー」疑惑の影 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0計算され尽くした疑惑の醸成速度や心理作用が魅せるヒッチコック・ミステリー

2020年2月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ヒッチコック渡米後、まだ2、3年しか経っていないにも関わらず、仕事の領域が厳密に分かれたハリウッド・スタッフへの采配方法、さらにはアメリカ文化や気質のようなものを正確に踏まえて構築した極上ミステリー。家族を頼ってやってきた外見上はパリッとした叔父さんを巡り、最初は彼を慕っていたはずの姪が徐々に「実は怪しい人物かも・・・」と葛藤を募らせていく。面白いのはその疑惑を醸成するバランス配分で、おそらくヒッチコックの中では独自のストップウォッチが機能しており、それに合わせて姪の疑心暗鬼が早すぎず遅すぎず、絶妙なスピードで膨らんでいったことが伺える。特に、ちょうど1時間を過ぎた頃に叔父さんの疑惑が画面に大写しになる構成には恐れ入ったし、通常ならここでクライマックスを迎えても良いところを、この先、さらに二転三転加えて独自色を貫くのもうまい。キャラ際立つ役者陣を配したファミリードラマの見せ方も実に見事だ。

コメントする
牛津厚信