「幻想に逃げた薄っぺらい青春ドラマ、描くべきものから逃げ続ける自己満足の迷走作」星つなぎのエリオ さきたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
幻想に逃げた薄っぺらい青春ドラマ、描くべきものから逃げ続ける自己満足の迷走作
『星つなぎのエリオ』は、そのタイトルが示す壮大さとは裏腹に、映像と物語のどちらにおいてもまったく芯が通っていない。美しい風景や幻想的な演出に頼りすぎて、肝心のキャラクターの内面や葛藤は浅く、観る者の共感を全く呼び起こせていない。まるで感情のない人形を動かしているかのように、登場人物たちは無意味に動き回るだけで、彼らの成長や変化の過程は描写不足に終わっている。
物語は抽象的で散漫だ。青春という普遍的テーマに寄り添うふりをしながらも、核心となる問題からは目を背け、いわゆる“幻想的な夢物語”として逃げている。だからこそ、作品のメッセージはぼやけ、何を伝えたいのかがまったく掴めない。言葉や映像の美しさで誤魔化しているだけで、実態は自己満足の散文詩に過ぎない。
さらに脚本は緩慢で、時間の流れが無意味に感じられ、観客の集中力を維持することに失敗している。退屈なカットが延々と続き、展開の起伏も少なく、何度も画面を見ているうちに「早く終わってくれ」としか思えなくなるのは致命的だ。
演出も散漫で、幻想的な要素を散りばめることが目的化し、物語の整合性は崩壊している。リアリティと幻想の境界が曖昧すぎて、むしろ混乱を招くばかりだ。これでは、物語に没入しようとしてもついていけず、最後まで感情移入は叶わない。
総じて、『星つなぎのエリオ』は、映画として描くべき本質を放棄し、美的装飾に逃げた自己満足の迷走作である。幻想の美しさに酔いしれたいだけの製作者のエゴが透けて見え、観客を置き去りにしたまま終わる。こうした作品に費やす時間は、誰にとっても無駄以外の何ものでもない。
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