「登場人物の誰にも、共感も感情移入もできない」星つなぎのエリオ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
登場人物の誰にも、共感も感情移入もできない
主人公のエリオが、どうして、それほど、宇宙人にさらわれることに執着するのか、あるいは、親身に世話をしてくれる叔母さんや好意的に接してくれる友達と打ち解けようとしないのか、その理由がよく分からない。
両親を亡くしたことが影響しているのかもしれないが、数々の惑星のリーダーが集まる宇宙船を自分の居場所と思ったり、エイリアンの子供とすぐに仲良くなったりする様子を見るにつけ、単に地球や地球人を毛嫌いしているだけとしか思えない。
その惑星のリーダーたちも、高度に発達した科学力を備えている割には、武力の前には無防備で、ただ逃げようとするだけというのは間が抜けているし、よくぞ今まで無事でいられたものだと呆れてしまった。
地球に追い返されたくないエリオが、これといった策もなく、敵の宇宙船に乗り込んでいくのも無謀としか思えないし、そこで、たまたま敵のリーダーの息子と知り合って、仲良くなるのも、行き当たりばったりで、ご都合主義としか言いようがない。
エリオと叔母さんの乗った宇宙船が、地球上の多くの協力者の力を借りながら、数々の宇宙デブリを回避していく場面にしても、こんな状況では、とてもロケットの打ち上げなどできないだろうと突っ込みたくなるし、結局、これが最大の見せ場だったことには、物足りなさを感じざるを得なかった。
ラストで、「力の信奉者」だと思われた敵のリーダーが、単なる子煩悩の父親で、きちんと約束を守る「良い人」だったというオチには、思わず拍子抜けしてしまったし、戦争や平和に関するメッセージがないのであれば、武力による侵攻というシチュエーションを、中途半端に描くべきではなかったと思えてならない。
変なポリコレへの配慮が感じられないのは良かったのだが、登場人物の誰にも、共感も感情移入もできなかったため、最後まで物語の中に入り込めなかったのは残念だった。

