「本店でお姉さん登場のサプライズがなかったのが悲しい」ハピネス Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
本店でお姉さん登場のサプライズがなかったのが悲しい
2024.5.18 イオンシネマ京都桂川
2024年の日本映画(118分、G)
原作は嶽本野ばらの小説『ハピネス(小学館)』
余命1週間を宣告された女子高生が、大好きな人とやりたいことをする様子を描いたラブロマンス映画
監督は篠原哲雄
脚本は川崎いづみ
物語の舞台は、都内某所
高校生の国木田雪夫(窪塚愛流)は、彼女の山岸由茉(蒔田彩珠)から「あと1週間で死ぬ」といきなり言われてしまう
状況を飲み込めない雪夫は何度もそれを確認するために聞き返してしまうが、彼女は動揺した様子もなく、それを受け止めていた
由茉は、生まれた時から心臓が奇形状態で、いつ何が起きてもおかしくない身体だった
そして、とうとう心臓の病気が悪化し、それによって余命宣告をされてしまう
主治医(松坂龍)は「由茉の心臓は手術に耐えられない」と告げ、すがる父(山崎まさよし)と母(吉田羊)を根気よく説得した
由茉は雪夫と2年近い関係になっていて、身体の関係になったのも数ヶ月前のこと
だが、ずっと身体のことは黙っていたが、とうとう隠せなくなってしまった
それゆえに雪夫に告げることになるのだが、いきなり1週間後に死ぬと言われて理解できる高校生などいるはずもない
映画は、由茉のわがままに付き合うことになった雪夫が描かれ、両親公認の中として愛を育んでいく様子が描かれている
由茉は兼ねてから「ロリータファッション」に興味を持っていて、お気に入りの喫茶店でロリータファッションを着こなすことを至福としていた
そして、大阪にある本店にいくことが夢で、両親公認のもと、大阪への一泊旅行に行くことになった
だが、その直前のお泊まりにて由茉は倒れてしまい、雪夫は怖くなってしまう
と、難病系の映画であるものの、悲壮感はそこまでなく、ユーモアあふれ、死に対して能動的であるように描かれていく
だが、寸前になって「死の恐怖」に囚われてしまい、「死の意味」について深く考えざるを得なくなる
このあたりの死生観とか哲学的な部分は面白いのだが、高校生のマインドでは到達できないよね、という原作者の大人の部分が露出しているのは面白かった
ちなみに、雪夫の姉・月子(橋本愛)も登場するのだが、一度も由茉と絡まないのは不思議で仕方がなかった
月子にも出番があるものの、過去エピソードを語って雪夫をその気にさせる程度の出番なのは勿体無いと思う
Innocent Worldの本店で偶然会うぐらいのサプライズがあっても良かったのではないだろうか
いずれにせよ、冒頭の「え?」の聞き返しの部分が「いつまでやるんやろ」と思うぐらい長く、この演出で最後まで行ったらちゃんと終わるんだろうかと心配してしまった
途中からテンポが速くなるが、前半の雪夫が由茉の状況を理解するまでが相当長いので、そこを寝ずにクリアできたら完走できるかもしれない
生まれて良かったと思えるかどうかを考えるために死はある、という言葉は言い得て妙という感じで、メンタルが弱っている人には効きそうに思うが、やっぱり高校生の発想で出る言葉ではないかなと思った