「主人公の旅立ちは新しい家族との絆と共に…」ギルバート・グレイプ KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
主人公の旅立ちは新しい家族との絆と共に…
この映画の監督が、かつて観賞した
「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」や
「サイダーハウス・ルール」と同じ人物との
認識は無かった。
94年のロードショー以来だったが
内容はほぼ忘れていたので、
小さな因習社会と特異な家族に
束縛された主人公が、
トレーラーでの自由な移動生活を
おくる少女の出現で、
どう解放されるのかと興味深く鑑賞した。
この作品は様々な社会問題を
写し取っているように思える。
家族の問題を一人で抱え込む主人公の姿は、
現代のヤングケアラーの問題にも
通じるものがある。
また、大手スーパーマーケットや
バーガーショップの進出は、
中央資本による地方社会の均一化を
想起させる。
子供の頃、私の住んでいた故郷の通りには
何でもあった。
八百屋も、米屋も、駄菓子屋も、
ラーメン屋も、貸本屋も。
そしてそれぞれの店主の顔が思い出される。
しかしその全てが今はない。
一軒の店屋も無くなってしまった。
そして、現在では小売店全てが
郊外のショッピングモールに集約され、
店主の顔が見えないのはどこでも一緒だ。
私の子供時代の登下校では
様々な店を覗きながら
社会を知ったものだろうが、
現代の多くの子供達は
そんな体験は出来ないのだろう。
代わりにネットで社会を知る時代に
なったのだろうが、
売り手の顔は見えないままだ。
私には、そんな昔の故郷に想いを寄せる
作品ともなった。
この映画のラストシーン、主人公は、
それまでの家族や因習社会の束縛から
自らを解放して旅立つ。
しかし、どこに向かって行っていこうが
中央資本の浸透が進む世界への
旅立ちではある。
食料品店夫婦のような理解ある店は
もう無いかもしれない。
まだまだ真の解放には高いハードルだ。
しかし、
彼は新しい家族との絆を育んで、
そのハードルを越えていくものと信じたい。
フォローありがとうございます。
とても嬉しく思っております。
この映画。
大好きな映画です。
母親を葬る・・・自分を解放する・・・
そして新天地へ。
彼に幸あれと願いますね。