市子のレビュー・感想・評価
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高校の時に付き合ってた彼にも、長谷川くんにも、市子は自分の秘密をひ...
ファムファタール。
今年初の映画館での鑑賞作品。池袋で映画を見るのは恐らく50年ぶりか?映画館の入っているロサ会館という建物は建物全体が昭和でびっくりした。作品は兎に角悲しい。国籍の無い子供の話を何度かメディアで耳にしたことはあるが本作もそれがメインテーマ。僕は関西弁を話す女性と付き合ったことはないが、長谷川(市子のフィアンセ)に感情移入してしまった。彼の演技は実に良かった。可哀想な環境とはいえ実に逞しいファムファタールを完璧に演じている。北(高校の同級生)は幸せだったと思う、彼女のヒーローになるという目的を果たしたのだから。
散漫
予告編はかなり既視感のあるものだったが、
だからこそどう落とすのか気になって足を運んだ。
だが、早々にほぼ結論ありきでサスペンス性は乏しく、
想定を超えるような展開はほぼなかった。
また、各々のエピソードに深みがなく、
十分に咀嚼しないままで回収されずモヤモヤが残った。
ラストも然り、こういうのがゲージツなのだろうか。
さらには杉咲花の熱演には魅入られたが、
違和感や稚拙さを感じてしまう共演者も散見され、
映画に没入できない要因のひとつとなった。
これらが相俟って少々ウトウトしてしまう場面もあった。
映画とは関係ないが、
派手さのない作品のせいか観客がすべて中高年のお一人様だった。
整然と適度な間隔を空けて席を取り、
上映中はもちろんその前後もほぼ余計な物音はなく、
エンドロールが終わって明るくなるまで誰一人席を立たなかった。
実に理想的で快適な空間だった。
観賞者たるものかくありたいものよと映画より感銘を受けた。
怖くて不気味な映画
昔のATGを好きだった人には嵌る作品
自主映画に近い制作スタイルなのが成功の要因。監督が脚本演出編集など全てをこなして作り上げた。まぁ〜誰もがこんな風に出来たら良いなぁ〜と思う映画作りですが、それを成功させる説得力のある映画は滅多にありません。
杉咲花の演技はATG映画「もう頬づえはつかない」の桃井かおりを彷彿させる演技でした。
元は2015年の演劇だと言うことで監督としての真っ直ぐな取り組みが成功させてるのでしょう。
ストーカーとは何か
2023年。戸田彬弘監督。結婚を決めた翌日に失踪した女性を巡り、婚約者の男がその行方を追いながら過去の事実に迫っていく、という話。離婚後300日問題(無戸籍児問題)と難病児介護問題を合わせた社会派ドラマで、「実は二人だった」型のミステリー仕立て。
気になったのは作中に出てくるストーカー。高校時代から女性を想い、殺人事件にまでかかわる男は「俺だけがお前を守れる」というあたりで支配的指向の持ち主であり、助けること=自分のものにすること、という思考で女性を執拗に追いかける。一方で、婚約者の男も警察と駆け引きまでして女性を追いかける。たしかに、支配的指向があるわけではなく、助けること=彼女に生きてほしい、という思考であるが、3年間一緒にいながら彼女のことを何も理解していなかった自分の過去に向き合うことである。ここにおいて彼女は彼の思考の手段であり、ネタである。こういう考えで追いかけることはストーカーとは言わないのだろうか、という疑問がふとわいた。
演者やそのパフォーマンスはいいけれど…
圧巻の演技
淡々と
進んで良かったんですが・・ラスト近くなり、はっきりと失速。あんな幸せそうな、思わせぶりな音声を被せるなら鼻唄で終わった方が良かった。
宇野祥平が最高。ちょっと気がかり、杉咲花キャストかぶりの予兆。
よってたかって虎にしたのか
杉咲花、すごくいい。
『誰も知らない』の後日譚?
主演の二人は、朝ドラ『おちょやん』で共演していた覚えがあった。パンフレットの森直人氏評のように、『砂の器』や『ある男』との近似性も感じたが、無戸籍で育ち、死体遺棄を行うという展開は、『誰も知らない』の後日譚とも思われた。「安楽死」や自殺幇助問題も含んでいる。楽天的な面しかみせなかった YOU 氏の演じた母親と比べると、中村ゆり氏の演じた母親は、転落気味だけれど、良心の片鱗をみせてくれる。市子の義父はソーシャルワーカーだったらしい。残念である。成り済ましを続けようとする市子に、義則がいつか追いつけると良いだろうな。
今期ベスト映画
無戸籍なうえ、家庭にも恵まれず、神様にも見放されたような一家の物語であり、胸が締め付けられた。
そんな非力な市子がそれらを跳ね返すように強く生きていく様が描かれていた。
だがそのキャラとは一変するシーンが数多くあり、とても恐ろしく感じた。
親の血からは抗えないとは言うが、ストーカー北くんに対しての扱いというのは本当に残酷だった。その立ち振る舞いはまるで水商売主の母親譲りだった。
そんなギャップもありハラハラした。
問題は長谷川くんがどうなってしまったのか。
長谷川くんの気持ちを考えるとやるせない。
戸籍問題や、悪い家庭環境が無ければ2人は望む通り結婚できていたと思うと本当に辛い。
市子の生き様
久しぶりに有楽町のマックで昼食を取り、日比谷シヤンテで杉咲花の熱演が話題の「市子」を観る。
プロポーズの翌日に失踪した市子を探す恋人の視点を中心に、彼女の過去と現在が交錯して市子の生き様が見えてくる。
日本社会が抱えるシングルマザー、無戸籍問題が根底にあり、決して彼女ひとりの話ではない。日本は国民皆保険であるが、戸籍が無ければ保険証も手に入らず、病院にもかかれないのである。
高校生から30歳までを演じる杉咲花はさすがである。
悲しきファムファタール
時制を交錯させながら市子のバックストーリーを紐解いていく構成に引き込まれ、最後まで緊張感が途切れす面白く観ることが出来た。
物語は失踪した市子を追いかける長谷川の視点で展開されていく。市子の過去を知る関係者を訪ねながら自分の知らない彼女の秘密を知っていく中で、彼女がなぜ失踪しなければならなかったのか?その理由が徐々に判明していく…というのが大筋である。
総じてよく練られた脚本だと思うが、過去編の伏線が後半の現代編で回収されていく構成は、ドラマがシンプルな分、やや安易な答え合わせに終始してしまったかな…という印象を持った。これなら現在の時間軸でそのまま描いても良かったのではないだろうか。
尚、”ある事件”の参考人として市子を追いかける刑事が登場してくるが、これによって物語にサスペンス的な要素が加味されていくようになる。これについては上手くいっているような気がした。
聞けば本作は元々は舞台劇だったということである。現在と過去を複雑に往来する本作が舞台劇でどのように上演されたのか気になる所である。映画版を観る限りあまり舞台劇には向かない内容だと思うのだが、そのあたりはどうなっているのだろうか。舞台版は未見なのでよく分からない。
それにしても、本作は誠に強烈な快作…ならぬ”怪作”と言える。
映画を観終わって真っ先に思ったことは、これほどバケモノじみたファムファタール映画もそうそうない…ということである。それくらい市子のしたたかにして大胆不敵な行動には戦慄を覚えてしまった。
しかも、彼女は悪女と言うには余りにも悲しき運命を背負った女である。その出自を知ると同情も禁じ得なかった。
映画を観た後で知ったのだが、市子のような境遇の人間は実際に世の中には結構いるそうである。自分はこの事実を知らなかったので、本作を観て少しだけ調べてみたが、これは法制上の問題に関わってくるので中々一筋縄ではいかない難題のようである。一応、今年の4月から制度が変更されるそうだが、市子のような人間がこれ以上生まれないことを願うばかりである。
市子を演じた杉咲花の好演も素晴らしかった。基本的には”低体温”な演技を貫いているが、要所で苦しみ、悲しみ、怒りをダイレクトに表現し、その迫力には圧倒されるばかりである。そして、そんな彼女が少ないながらも劇中で笑みをこぼすシーンが幾つかある。悲壮感が漂う中、そこだけは救いだった。
一方、映画を観ていて若干分かりづらい部分があったのは残念だった。
例えば、市子の母親は水商売をしていて複数人の男が部屋に上がり込んでくる。詳しい説明がないまま入れ代わり立ち代わり登場するので、観てて少し混乱してしまった。
演出面の不満も幾つかあった。一つには、演技が過剰に映る場面が一部で見受けられたことである。どちらかというと本作の杉咲花はリアリズムを重視した演技に徹しており、それとのバランスで見るとどうしても違和感を覚えてしまう。
終盤の市子の母親の丁寧なお辞儀もその心情を察すれば理解できなくもないが、むしろ無い方が彼女のキャラクターとしては一貫しているような気がした。
終盤「ここで終わったら駄目だ」と3回もハラハラしながら観てて「良し...
あの子なんか気になる…
最初はちょっと気味悪い少女だと思って観ていたが、だんだんと惹かれ、中盤からは彼氏と同様に本当の彼女はどんな人物なのか真剣に探しながら鑑賞していた。
唐突につぶやかれる意味深な言葉や大きくて黒い眼差しによって、彼女は今何を思って何を感じているのか、過去に何があったのか知りたくなってしまう。
ラスト以降に彼氏は市子を見つけることができたのか?また見つけたとき市子はどのような行動を取るのか?考えただけでぞくぞくする。
この作品を2023年内に観なかったことを後悔している。
確実に年間ベスト10に入っていた。
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