市子のレビュー・感想・評価
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淡々と
進んで良かったんですが・・ラスト近くなり、はっきりと失速。あんな幸せそうな、思わせぶりな音声を被せるなら鼻唄で終わった方が良かった。
宇野祥平が最高。ちょっと気がかり、杉咲花キャストかぶりの予兆。
よってたかって虎にしたのか
まず、杉咲花さん。11月の某映画のレビューでは酷評してしまいまいしたが、監督が違うとこんないい芝居のできる役者さんだったんですね。ごめんなさい。
シチュエーションは異なるけど、ブラックラグーンの名エピソードのあのセリフを思い出しました。
「誰かが、ほんの少し優しければあの子たちは−−学校に通い、友達を作って、幸せに暮らしただろう。でも、そうはならなかった。ならなかったんだよ、ロック。だから−−この話はここでお終いなんだ」
『誰も知らない』の後日譚?
主演の二人は、朝ドラ『おちょやん』で共演していた覚えがあった。パンフレットの森直人氏評のように、『砂の器』や『ある男』との近似性も感じたが、無戸籍で育ち、死体遺棄を行うという展開は、『誰も知らない』の後日譚とも思われた。「安楽死」や自殺幇助問題も含んでいる。楽天的な面しかみせなかった YOU 氏の演じた母親と比べると、中村ゆり氏の演じた母親は、転落気味だけれど、良心の片鱗をみせてくれる。市子の義父はソーシャルワーカーだったらしい。残念である。成り済ましを続けようとする市子に、義則がいつか追いつけると良いだろうな。
今期ベスト映画
無戸籍なうえ、家庭にも恵まれず、神様にも見放されたような一家の物語であり、胸が締め付けられた。
そんな非力な市子がそれらを跳ね返すように強く生きていく様が描かれていた。
だがそのキャラとは一変するシーンが数多くあり、とても恐ろしく感じた。
親の血からは抗えないとは言うが、ストーカー北くんに対しての扱いというのは本当に残酷だった。その立ち振る舞いはまるで水商売主の母親譲りだった。
そんなギャップもありハラハラした。
問題は長谷川くんがどうなってしまったのか。
長谷川くんの気持ちを考えるとやるせない。
戸籍問題や、悪い家庭環境が無ければ2人は望む通り結婚できていたと思うと本当に辛い。
市子の生き様
久しぶりに有楽町のマックで昼食を取り、日比谷シヤンテで杉咲花の熱演が話題の「市子」を観る。
プロポーズの翌日に失踪した市子を探す恋人の視点を中心に、彼女の過去と現在が交錯して市子の生き様が見えてくる。
日本社会が抱えるシングルマザー、無戸籍問題が根底にあり、決して彼女ひとりの話ではない。日本は国民皆保険であるが、戸籍が無ければ保険証も手に入らず、病院にもかかれないのである。
高校生から30歳までを演じる杉咲花はさすがである。
悲しきファムファタール
時制を交錯させながら市子のバックストーリーを紐解いていく構成に引き込まれ、最後まで緊張感が途切れす面白く観ることが出来た。
物語は失踪した市子を追いかける長谷川の視点で展開されていく。市子の過去を知る関係者を訪ねながら自分の知らない彼女の秘密を知っていく中で、彼女がなぜ失踪しなければならなかったのか?その理由が徐々に判明していく…というのが大筋である。
総じてよく練られた脚本だと思うが、過去編の伏線が後半の現代編で回収されていく構成は、ドラマがシンプルな分、やや安易な答え合わせに終始してしまったかな…という印象を持った。これなら現在の時間軸でそのまま描いても良かったのではないだろうか。
尚、”ある事件”の参考人として市子を追いかける刑事が登場してくるが、これによって物語にサスペンス的な要素が加味されていくようになる。これについては上手くいっているような気がした。
聞けば本作は元々は舞台劇だったということである。現在と過去を複雑に往来する本作が舞台劇でどのように上演されたのか気になる所である。映画版を観る限りあまり舞台劇には向かない内容だと思うのだが、そのあたりはどうなっているのだろうか。舞台版は未見なのでよく分からない。
それにしても、本作は誠に強烈な快作…ならぬ”怪作”と言える。
映画を観終わって真っ先に思ったことは、これほどバケモノじみたファムファタール映画もそうそうない…ということである。それくらい市子のしたたかにして大胆不敵な行動には戦慄を覚えてしまった。
しかも、彼女は悪女と言うには余りにも悲しき運命を背負った女である。その出自を知ると同情も禁じ得なかった。
映画を観た後で知ったのだが、市子のような境遇の人間は実際に世の中には結構いるそうである。自分はこの事実を知らなかったので、本作を観て少しだけ調べてみたが、これは法制上の問題に関わってくるので中々一筋縄ではいかない難題のようである。一応、今年の4月から制度が変更されるそうだが、市子のような人間がこれ以上生まれないことを願うばかりである。
市子を演じた杉咲花の好演も素晴らしかった。基本的には”低体温”な演技を貫いているが、要所で苦しみ、悲しみ、怒りをダイレクトに表現し、その迫力には圧倒されるばかりである。そして、そんな彼女が少ないながらも劇中で笑みをこぼすシーンが幾つかある。悲壮感が漂う中、そこだけは救いだった。
一方、映画を観ていて若干分かりづらい部分があったのは残念だった。
例えば、市子の母親は水商売をしていて複数人の男が部屋に上がり込んでくる。詳しい説明がないまま入れ代わり立ち代わり登場するので、観てて少し混乱してしまった。
演出面の不満も幾つかあった。一つには、演技が過剰に映る場面が一部で見受けられたことである。どちらかというと本作の杉咲花はリアリズムを重視した演技に徹しており、それとのバランスで見るとどうしても違和感を覚えてしまう。
終盤の市子の母親の丁寧なお辞儀もその心情を察すれば理解できなくもないが、むしろ無い方が彼女のキャラクターとしては一貫しているような気がした。
終盤「ここで終わったら駄目だ」と3回もハラハラしながら観てて「良し...
終盤「ここで終わったら駄目だ」と3回もハラハラしながら観てて「良し ここだ」のタイミングで終わった杉咲花の代表作。
戸田彬弘監督が、自身の主宰する劇団チーズtheaterの旗揚げ公演として上演した舞台「川辺市子のために」を映画化した人間ドラマ。
宮部みゆきの小説「火車」を思い出す。
あの子なんか気になる…
最初はちょっと気味悪い少女だと思って観ていたが、だんだんと惹かれ、中盤からは彼氏と同様に本当の彼女はどんな人物なのか真剣に探しながら鑑賞していた。
唐突につぶやかれる意味深な言葉や大きくて黒い眼差しによって、彼女は今何を思って何を感じているのか、過去に何があったのか知りたくなってしまう。
ラスト以降に彼氏は市子を見つけることができたのか?また見つけたとき市子はどのような行動を取るのか?考えただけでぞくぞくする。
この作品を2023年内に観なかったことを後悔している。
確実に年間ベスト10に入っていた。
杉咲花が本当にかわいい
2024年1月6日
杉咲花が主演なのと、サスペンス的なあらすじに惹かれて観に行きました。
観終わった感想としては、杉咲花可愛すぎて好き、ストーリーはもう一捻り欲しい、という感じです。
序盤で市子と月子の2つの名前を名乗っていた点と同い年の子より成長が早い点で、戸籍がない系の話かなと気づきました。
なので、終盤までは少し展開が読めてしまいました。でも、杉咲花がかわいいので気になりませんでした。
展開が読めるとはいえ、市子が苦しみながら、自分のアイデンティティを必死に守って生きているのに報われない描写には胸を締め付けられました。
そう思わせる杉咲花の演技がとても良かったです。
ただ、終盤に北が殺されたあたりで、映画の雰囲気が変わった気がします。
市子は、わざわざ身寄りのない、友人のいない、自殺願望のある同年代の女の子を探して、北と心中したように見せかけて、新しい戸籍を手に入れてました。
観ながら、しびれる〜てなりました。
『普通に生きたい』と願ってたのに、それを許してくれない、真相を知る北が邪魔になって、新しい戸籍を手に入れるついでに殺した、というところでしょうか。
結局市子は、市子として普通に生きたかったけど、また別人として隠れながら生きる道を選んだのだと思うと、どこまでも報われないと思いました。
そして長谷川は市子の過去を紐解くための駒という扱いで、あまり重要な要素ではなかったと思いました。
ラストにもあまり絡まなかったですし。
ただ、市子が市子として普通に幸せに生きることができた一面を見せる役割として必要だったんでしょう。
脚本と杉咲花の好演が光る作品
そろそろ終映してしまう思い、遅ればせながら鑑賞。
戸田彬弘監督自らが主宰する劇団の戯曲をベースとした作品。
3年間共に暮らした恋人の前から突然消える市子。市子の行方を追う中、画面では様々な時制で、彼女の持つ過去を辿り、取り巻く過酷な環境を描きながら、ストーリーは展開していく。
壮絶な境遇を生きた市子という女性を、主演の杉咲花が見事に演じ切り、その表情や話し方から、誰も掴みきれない市子という存在、その生き様を形作っていく。
重いストーリーではあるが、すべての役者がしっかり演じ、実際にある社会問題を多面的に取り上げている。
脚本とキャスティングの良さに、市子を取り巻く生活環境の演出、その空気感を肌身に感じて、2時間集中を切らすことなく観ることが出来た。
観る者にとって、取り方や感じ方が異なるという、映画として完成度が高い作品。
杉咲花の演技が◎
もうとにかく、市子の演技が最後まで引っ張っていってくれた。
もっと凄惨さが伝わる表現を、という声もきっとあるだろうが、彼女の重たい表情や演技で十分に表現されている。むしろ過度な表現で、無駄に心を抉られて主旨がぶれる作品もあるので、その点で良いバランスだと感じた。
それで中村ゆり、めちゃきれいだな。
だめんずに引っかかってしまったのが可哀想だなと思ってしまった。
生きて欲しいと思ってしまう
たとえ人を殺していたとしても市子には市子として生きて欲しいと思ってしまった。
杉咲花が個人的にはとても良かった。
今までも素敵だと思っていたが、より魅力を感じた。
始まりの関西弁とプロポーズでの涙にきゅんとした。
物語が進むに連れて家庭に問題のある過去がわかってきた。
欠落した感情と彼女の儚さと取り乱さない姿に惹かれる。ミステリアスだけど可愛らしい。
関西弁で言う彼女のありがとうは痺れた。
雨の中、雨に打たれに行く彼女。
花火を、みんながが上を見るから良いと言う彼女。
ケーキ屋で働くクリスマス仕様の彼女には思わず可愛いと言ってしまいそうになる。
神社でゆっくり焼きそばを食べるのもいい。
こうなってくるとただの杉咲花ファンになってしまう。
でもそれが市子。市子を好きになってしまうのは仕方がないし、殺人を犯してるなんて誰も思わないだろう。男性陣が俺が守ると言いたくなるのもわかる。
必死という感じでもない、すこんと生きることができている。全てを知った長谷川はどうなるのかな。
物語はベビーな内容だけど、疲れなかった。
最後までどうなっていくのか気になって面白かった。
知ろうとすればするほど離れてしまう心
とても悲しい映画でした。
途中まで関西弁のサイコパスってこんな感じなのかな、というような気分で見ていましたが、中盤から彼女の持つ特性が分かった後は本当に物悲しく、最後は泣きそうになりました。
中盤、市子が北と再会したシーンで、殺人幇助のことは触れずに何でもないように放っておいてくれ、自分には夢があるというシーンで彼女の特性について分かって来ます。
市子にとって北含め大抵の男は利用出来るかどうか程度の価値しかないのでしょう。
これは決して市子に感情が無いわけではなく、感情のしきい値が異常に高く、滅多なことでは心の琴線が動かないせいだと思います。
また、普通に生きるためには"過去の自分"を切り捨てる必要があるため、北は過去の自分を繋げてしまうピースになってしまうことも、邪険に扱っている理由だと思います。
北は
「市子を救ってやれるのは自分しかいない」
と言っていましたが、市子にとってはむしろ逆で、最後に車ごと入水させて殺してしまっていることから分かる通り、今の自分を過去の自分に縛る重しでしかなかった、というところが悲しいところです。
その点、長谷川は市子にとって過去を聞かれないで付き合い続けられる点で救ってくれる人物になり得たと思います。
しかし、生駒山で月子の遺体が見つかってしまったことから逃走を選んだ時点で、長谷川も自分の過去を探る人物になってしまい、彼は市子にとっての救世主では無くなってしまったと思います。
市子は普通の人生を送ることが目的となっていますが、周りの人間は市子のことを知ろうとすればするほど、彼女から遠ざけられてしまうという矛盾があり、それがこの映画が観客に突き付ける業となっていると思います。
この業に想いを馳せた時に感じる悲哀が、この映画の魅力だと感じました。
儚げで大人しそうな美女
突然失踪した恋人の市子を探す男性の行動を軸にストーリーが進む。最初は多くを説明せず、ストーリーが進むに連れて、市子の人物像や過去、事件の全貌が徐々に明らかにされる造りになっているため、最後まで緊張感を持って観ることができる。
妹、義理の父親、自身に執着する高校の同級生、自分と見た目が似ている自殺志願者の女性と、市子は作中で4人を殺害している。この事実だけで判断すると、市子は自分の都合で人を殺した連続殺人犯となる。
しかし、幼少期より苛酷な生活を強いられた上に、存在自体が国に認知されないといった状況でも、人並みの幸せな人生をを諦めずに懸命にもがく市子を責めることは難しいのではないだろうか。
終盤の市子が鼻歌を歌いながら歩くシーンでは、儚げで大人しそうな市子から、何がなんでも生きて幸せになろうとする強い意思を感じられる。
杉咲花は天才という名の怪物です。
戸田監督がとんでもない傑作を産んだ。
いつも仲良くさせて貰ってるので
速攻、監督に感動のLINEを送っちゃいましたよ!
知り合いの監督だからとかそんな忖度なし。
傑作が産まれた瞬間を体験した感じだった。
震えと優しさが交差するなんて感情そう無いです。
この手の映画で
“人間が怖い”はよく聞くけど
“生活そのものが怖い”んです。
その場で息を吸う事がもう…。
重いし悲しいし深いし
初心者向けじゃないから
濃いところにフラグたくさんあるし。
なのに!!
なのにあんなところで優しいシーン持ってこないで。
感情の置き場がない傑作。
そして杉咲花 さん。
天才という名の怪物です。
もう凄いとかテキストで表すの無理。
で、杉咲さんも凄いけど
凄い杉咲さんを演出した監督&演出部。
とんでもない傑作ありがとうございました。
…ラストとか超怖いやん(´;ω;`)
強く生きる、ということ
舞台劇が原作。気になってはいたのですが、11月からロングラン、とのことで年明け1作品目で鑑賞。
面白いです。プロポーズの2日後に失踪したヒロイン、市子を逃げられた彼氏と、市子をある事件の参考人として追う刑事が、探す話。二人が市子を探す過程で浮かび上がる彼女の過去が話のメインになります。
市子には戸籍がなく、難病で自宅から出れない妹の月子の戸籍を使って生きてきた。彼氏からプロポーズされ、いざ結婚となるとそれが発覚するので逃げた、という設定。
この設定は凄く面白い。市子を、可哀想な境遇に生まれた女の子、と描かずに、そんな境遇にも強く生き抜く女、と描くのも好感が持てます。ヒロインの杉咲花も、地味だけど意外とモテる、って感じが上手く出ていますね。
自らの不遇に馴染めず月子で生きることに抵抗を感じている小学生時代、月子と義父を葬り月子を乗っ取り生きると決めた高校時代、月子から市子へと乗換を果たし過去と決別する時代、とそれぞれで市子の感情の違いを出すのが、この映画の見せ所かな。
全くストーリーは違いますが、自分のなかでは「白夜行」と「嫌われ松子の一生」が浮かびました。この2作品に比べてしまうと、1・2枚落ちると思いますが、まあ楽しめる作品ではあります。
この物語を生きる圧巻の俳優陣
先ず映画を観てしんどくなり、前の日お酒飲み過ぎたのか思いながらなんとか堪えて最後まで観ました。
自分の感想は2回目を観た後にまとめたい。
市子完成披露上映会
杉咲花舞台挨拶からの引用を
「市子」を演じた時間は引き裂かれる様な傷みがあったと同時に自分の中の大切な記憶として何度も何度も再生したい様な多幸感に包まれた時間でもあります。
人は外側から他者を見て…
大変そうとか可哀想とか…
自分の物差しでいろんなことを思うことがあると思うんですが…
中村ゆりさん演じる市子の母が
「幸せな時もあったんやで」という台詞があるように、どんな環境にいたとしても、その人のことはその人にしか分からなくて
どんなふうに感じて
日々何を受けとめているのかは自分たちには解らないこともあって
その上で、どれだけ他者と関わっていくことができるんだろうということを突きつけられる映画になっていると思います。
個人的にはこの映画をどう受けとめるか自分たちの実生活に反映される様な気がしてますし
この話しは自分には関係ないと思っている人にこそ、この映画を観てもらいたいという気持ちがあります。
何か揺さぶられるものがあれば
この映画があったということを広めて頂ければ嬉しいです。
このインタビューに感心しました。
杉咲花、圧巻の演技
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