市子のレビュー・感想・評価
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昔のATGを好きだった人には嵌る作品
自主映画に近い制作スタイルなのが成功の要因。監督が脚本演出編集など全てをこなして作り上げた。まぁ〜誰もがこんな風に出来たら良いなぁ〜と思う映画作りですが、それを成功させる説得力のある映画は滅多にありません。
杉咲花の演技はATG映画「もう頬づえはつかない」の桃井かおりを彷彿させる演技でした。
元は2015年の演劇だと言うことで監督としての真っ直ぐな取り組みが成功させてるのでしょう。
ストーカーとは何か
2023年。戸田彬弘監督。結婚を決めた翌日に失踪した女性を巡り、婚約者の男がその行方を追いながら過去の事実に迫っていく、という話。離婚後300日問題(無戸籍児問題)と難病児介護問題を合わせた社会派ドラマで、「実は二人だった」型のミステリー仕立て。
気になったのは作中に出てくるストーカー。高校時代から女性を想い、殺人事件にまでかかわる男は「俺だけがお前を守れる」というあたりで支配的指向の持ち主であり、助けること=自分のものにすること、という思考で女性を執拗に追いかける。一方で、婚約者の男も警察と駆け引きまでして女性を追いかける。たしかに、支配的指向があるわけではなく、助けること=彼女に生きてほしい、という思考であるが、3年間一緒にいながら彼女のことを何も理解していなかった自分の過去に向き合うことである。ここにおいて彼女は彼の思考の手段であり、ネタである。こういう考えで追いかけることはストーカーとは言わないのだろうか、という疑問がふとわいた。
演者やそのパフォーマンスはいいけれど…
圧巻の演技
淡々と
進んで良かったんですが・・ラスト近くなり、はっきりと失速。あんな幸せそうな、思わせぶりな音声を被せるなら鼻唄で終わった方が良かった。
宇野祥平が最高。ちょっと気がかり、杉咲花キャストかぶりの予兆。
よってたかって虎にしたのか
杉咲花、すごくいい。
『誰も知らない』の後日譚?
主演の二人は、朝ドラ『おちょやん』で共演していた覚えがあった。パンフレットの森直人氏評のように、『砂の器』や『ある男』との近似性も感じたが、無戸籍で育ち、死体遺棄を行うという展開は、『誰も知らない』の後日譚とも思われた。「安楽死」や自殺幇助問題も含んでいる。楽天的な面しかみせなかった YOU 氏の演じた母親と比べると、中村ゆり氏の演じた母親は、転落気味だけれど、良心の片鱗をみせてくれる。市子の義父はソーシャルワーカーだったらしい。残念である。成り済ましを続けようとする市子に、義則がいつか追いつけると良いだろうな。
今期ベスト映画
無戸籍なうえ、家庭にも恵まれず、神様にも見放されたような一家の物語であり、胸が締め付けられた。
そんな非力な市子がそれらを跳ね返すように強く生きていく様が描かれていた。
だがそのキャラとは一変するシーンが数多くあり、とても恐ろしく感じた。
親の血からは抗えないとは言うが、ストーカー北くんに対しての扱いというのは本当に残酷だった。その立ち振る舞いはまるで水商売主の母親譲りだった。
そんなギャップもありハラハラした。
問題は長谷川くんがどうなってしまったのか。
長谷川くんの気持ちを考えるとやるせない。
戸籍問題や、悪い家庭環境が無ければ2人は望む通り結婚できていたと思うと本当に辛い。
市子の生き様
久しぶりに有楽町のマックで昼食を取り、日比谷シヤンテで杉咲花の熱演が話題の「市子」を観る。
プロポーズの翌日に失踪した市子を探す恋人の視点を中心に、彼女の過去と現在が交錯して市子の生き様が見えてくる。
日本社会が抱えるシングルマザー、無戸籍問題が根底にあり、決して彼女ひとりの話ではない。日本は国民皆保険であるが、戸籍が無ければ保険証も手に入らず、病院にもかかれないのである。
高校生から30歳までを演じる杉咲花はさすがである。
悲しきファムファタール
時制を交錯させながら市子のバックストーリーを紐解いていく構成に引き込まれ、最後まで緊張感が途切れす面白く観ることが出来た。
物語は失踪した市子を追いかける長谷川の視点で展開されていく。市子の過去を知る関係者を訪ねながら自分の知らない彼女の秘密を知っていく中で、彼女がなぜ失踪しなければならなかったのか?その理由が徐々に判明していく…というのが大筋である。
総じてよく練られた脚本だと思うが、過去編の伏線が後半の現代編で回収されていく構成は、ドラマがシンプルな分、やや安易な答え合わせに終始してしまったかな…という印象を持った。これなら現在の時間軸でそのまま描いても良かったのではないだろうか。
尚、”ある事件”の参考人として市子を追いかける刑事が登場してくるが、これによって物語にサスペンス的な要素が加味されていくようになる。これについては上手くいっているような気がした。
聞けば本作は元々は舞台劇だったということである。現在と過去を複雑に往来する本作が舞台劇でどのように上演されたのか気になる所である。映画版を観る限りあまり舞台劇には向かない内容だと思うのだが、そのあたりはどうなっているのだろうか。舞台版は未見なのでよく分からない。
それにしても、本作は誠に強烈な快作…ならぬ”怪作”と言える。
映画を観終わって真っ先に思ったことは、これほどバケモノじみたファムファタール映画もそうそうない…ということである。それくらい市子のしたたかにして大胆不敵な行動には戦慄を覚えてしまった。
しかも、彼女は悪女と言うには余りにも悲しき運命を背負った女である。その出自を知ると同情も禁じ得なかった。
映画を観た後で知ったのだが、市子のような境遇の人間は実際に世の中には結構いるそうである。自分はこの事実を知らなかったので、本作を観て少しだけ調べてみたが、これは法制上の問題に関わってくるので中々一筋縄ではいかない難題のようである。一応、今年の4月から制度が変更されるそうだが、市子のような人間がこれ以上生まれないことを願うばかりである。
市子を演じた杉咲花の好演も素晴らしかった。基本的には”低体温”な演技を貫いているが、要所で苦しみ、悲しみ、怒りをダイレクトに表現し、その迫力には圧倒されるばかりである。そして、そんな彼女が少ないながらも劇中で笑みをこぼすシーンが幾つかある。悲壮感が漂う中、そこだけは救いだった。
一方、映画を観ていて若干分かりづらい部分があったのは残念だった。
例えば、市子の母親は水商売をしていて複数人の男が部屋に上がり込んでくる。詳しい説明がないまま入れ代わり立ち代わり登場するので、観てて少し混乱してしまった。
演出面の不満も幾つかあった。一つには、演技が過剰に映る場面が一部で見受けられたことである。どちらかというと本作の杉咲花はリアリズムを重視した演技に徹しており、それとのバランスで見るとどうしても違和感を覚えてしまう。
終盤の市子の母親の丁寧なお辞儀もその心情を察すれば理解できなくもないが、むしろ無い方が彼女のキャラクターとしては一貫しているような気がした。
終盤「ここで終わったら駄目だ」と3回もハラハラしながら観てて「良し...
あの子なんか気になる…
最初はちょっと気味悪い少女だと思って観ていたが、だんだんと惹かれ、中盤からは彼氏と同様に本当の彼女はどんな人物なのか真剣に探しながら鑑賞していた。
唐突につぶやかれる意味深な言葉や大きくて黒い眼差しによって、彼女は今何を思って何を感じているのか、過去に何があったのか知りたくなってしまう。
ラスト以降に彼氏は市子を見つけることができたのか?また見つけたとき市子はどのような行動を取るのか?考えただけでぞくぞくする。
この作品を2023年内に観なかったことを後悔している。
確実に年間ベスト10に入っていた。
杉咲花が本当にかわいい
2024年1月6日
杉咲花が主演なのと、サスペンス的なあらすじに惹かれて観に行きました。
観終わった感想としては、杉咲花可愛すぎて好き、ストーリーはもう一捻り欲しい、という感じです。
序盤で市子と月子の2つの名前を名乗っていた点と同い年の子より成長が早い点で、戸籍がない系の話かなと気づきました。
なので、終盤までは少し展開が読めてしまいました。でも、杉咲花がかわいいので気になりませんでした。
展開が読めるとはいえ、市子が苦しみながら、自分のアイデンティティを必死に守って生きているのに報われない描写には胸を締め付けられました。
そう思わせる杉咲花の演技がとても良かったです。
ただ、終盤に北が殺されたあたりで、映画の雰囲気が変わった気がします。
市子は、わざわざ身寄りのない、友人のいない、自殺願望のある同年代の女の子を探して、北と心中したように見せかけて、新しい戸籍を手に入れてました。
観ながら、しびれる〜てなりました。
『普通に生きたい』と願ってたのに、それを許してくれない、真相を知る北が邪魔になって、新しい戸籍を手に入れるついでに殺した、というところでしょうか。
結局市子は、市子として普通に生きたかったけど、また別人として隠れながら生きる道を選んだのだと思うと、どこまでも報われないと思いました。
そして長谷川は市子の過去を紐解くための駒という扱いで、あまり重要な要素ではなかったと思いました。
ラストにもあまり絡まなかったですし。
ただ、市子が市子として普通に幸せに生きることができた一面を見せる役割として必要だったんでしょう。
脚本と杉咲花の好演が光る作品
そろそろ終映してしまう思い、遅ればせながら鑑賞。
戸田彬弘監督自らが主宰する劇団の戯曲をベースとした作品。
3年間共に暮らした恋人の前から突然消える市子。市子の行方を追う中、画面では様々な時制で、彼女の持つ過去を辿り、取り巻く過酷な環境を描きながら、ストーリーは展開していく。
壮絶な境遇を生きた市子という女性を、主演の杉咲花が見事に演じ切り、その表情や話し方から、誰も掴みきれない市子という存在、その生き様を形作っていく。
重いストーリーではあるが、すべての役者がしっかり演じ、実際にある社会問題を多面的に取り上げている。
脚本とキャスティングの良さに、市子を取り巻く生活環境の演出、その空気感を肌身に感じて、2時間集中を切らすことなく観ることが出来た。
観る者にとって、取り方や感じ方が異なるという、映画として完成度が高い作品。
杉咲花の演技が◎
生きて欲しいと思ってしまう
たとえ人を殺していたとしても市子には市子として生きて欲しいと思ってしまった。
杉咲花が個人的にはとても良かった。
今までも素敵だと思っていたが、より魅力を感じた。
始まりの関西弁とプロポーズでの涙にきゅんとした。
物語が進むに連れて家庭に問題のある過去がわかってきた。
欠落した感情と彼女の儚さと取り乱さない姿に惹かれる。ミステリアスだけど可愛らしい。
関西弁で言う彼女のありがとうは痺れた。
雨の中、雨に打たれに行く彼女。
花火を、みんながが上を見るから良いと言う彼女。
ケーキ屋で働くクリスマス仕様の彼女には思わず可愛いと言ってしまいそうになる。
神社でゆっくり焼きそばを食べるのもいい。
こうなってくるとただの杉咲花ファンになってしまう。
でもそれが市子。市子を好きになってしまうのは仕方がないし、殺人を犯してるなんて誰も思わないだろう。男性陣が俺が守ると言いたくなるのもわかる。
必死という感じでもない、すこんと生きることができている。全てを知った長谷川はどうなるのかな。
物語はベビーな内容だけど、疲れなかった。
最後までどうなっていくのか気になって面白かった。
知ろうとすればするほど離れてしまう心
とても悲しい映画でした。
途中まで関西弁のサイコパスってこんな感じなのかな、というような気分で見ていましたが、中盤から彼女の持つ特性が分かった後は本当に物悲しく、最後は泣きそうになりました。
中盤、市子が北と再会したシーンで、殺人幇助のことは触れずに何でもないように放っておいてくれ、自分には夢があるというシーンで彼女の特性について分かって来ます。
市子にとって北含め大抵の男は利用出来るかどうか程度の価値しかないのでしょう。
これは決して市子に感情が無いわけではなく、感情のしきい値が異常に高く、滅多なことでは心の琴線が動かないせいだと思います。
また、普通に生きるためには"過去の自分"を切り捨てる必要があるため、北は過去の自分を繋げてしまうピースになってしまうことも、邪険に扱っている理由だと思います。
北は
「市子を救ってやれるのは自分しかいない」
と言っていましたが、市子にとってはむしろ逆で、最後に車ごと入水させて殺してしまっていることから分かる通り、今の自分を過去の自分に縛る重しでしかなかった、というところが悲しいところです。
その点、長谷川は市子にとって過去を聞かれないで付き合い続けられる点で救ってくれる人物になり得たと思います。
しかし、生駒山で月子の遺体が見つかってしまったことから逃走を選んだ時点で、長谷川も自分の過去を探る人物になってしまい、彼は市子にとっての救世主では無くなってしまったと思います。
市子は普通の人生を送ることが目的となっていますが、周りの人間は市子のことを知ろうとすればするほど、彼女から遠ざけられてしまうという矛盾があり、それがこの映画が観客に突き付ける業となっていると思います。
この業に想いを馳せた時に感じる悲哀が、この映画の魅力だと感じました。
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