「大きな違和感がある」市子 ironさんの映画レビュー(感想・評価)
大きな違和感がある
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市子が筋ジストロフィーの妹の人工呼吸器を外すシーンがある。仕事から帰ってきた母親がそのことを知ったとき、なんと「市子、ありがとう」と言うのだ。後に母親の告白で「もう限界だった」とあるので、妹のためではなく、自分たちの介護疲れで殺したということになる。どんなに介護が大変でも母親はわが子に生きてもらいたいと考えるものだ。世の同じ境遇の母親たちが介護疲れで難病のわが子を殺したなんて聞いたことがない。この殺人と母親の「ありがとう」は、同じ境遇の人たちにあまりに無頓着で失礼だと思う。
そして、妹を殺しておいて(他に3人も殺している)良心の呵責も感じないで自分は幸せを求める市子を、戸籍もない過酷な環境で育った幸薄い女みたいに描いているのには大きな違和感がある。「人は殺しているけど、かわいそうな女なんだよ」とでも言いたいのだろうが、どれも情状酌量の殺人とは思えず(注)、第一、市子を見ていると同情も共感もできない。
(注)母親の男から罵声を浴びて殺すが、あの程度の罵声で人を殺すのは異常。
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