「ある女」市子 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
ある女
話題になっていたので、観に行こうと思いましたが満員御礼なくらい人がいたので、なんとかタイミングを見つけての鑑賞。
友人から聞いてた通り、「ある男」と似たようなテーマを扱っており、あちらもそこまでハマりませんでしたが説得性は「ある男」の方があり、比べるとこちらの方が映画として見劣るかなと思いました。
なんだか人尋ねの様子がドキュメンタリーの様に思えてしまい、映画的なメリハリが失われていたのも残念だなと思いました。演技も舞台と映画と異種のものが同じ空間にいて、それがうまく噛み合っていなかったのも違和感を感じる要因でした。
市子と関わってきた人物のほとんどが大変な未来を迎えており、現代的な問題を多く抱えているのはフィクションとはいえどやり過ぎだよなぁと思ってしまいました。
まだ普通に過ごしている北くんも市子のストーカー的なポジションも、好意を持っているくらいで抑えられなかったのかなと思いましたし、自殺願望の子は物語に必要だったのかとも思ってしまいました。
関わる人物が多いせいか、一つ一つのシーンが作業的に進められており、テンポがいいと思うのとは裏腹に雑だなと思ってしまったのが惜しかったです。
市子の身勝手さ、ホラ吹きな感じは普通になりたいという願望から生まれたもう1人の自分だろうなと思いましたが、身勝手さが先行して感情移入できず、それでいて逆の意味で凄いと思えなかったのも残念だなと思いました。
杉咲花さんが今作では素晴らしい活躍をされていました。心ここに在らずな女性を見事に演じ切っていましたし、観客を見つめる黒目がこれはこれは大きくて吸い込まれてしまいました。
普通の人生を生きたい女性が、普通の人生を過ごす女性になり変わって過ごすというテーマ自体は良かったですし、杉咲さんの演技には惹き込まれましたが、映画として面白かったかと聞かれると微妙な作品だなと思いました。驚きのあった「ある男」とはまた違う切り口で終わらせるのかと思いきや、中盤で明らかになってしまって消化不良だったのも残念でした。
元々が舞台スタートな作品という事で、舞台版を観たら印象も変わるのかななんて考えたりしてしまいました。
エンドロールでの鼻歌、良い味を出していました。
鑑賞日 12/19