「仕方なかったはありなのか」市子 mvlvさんの映画レビュー(感想・評価)
仕方なかったはありなのか
いくつかの問題を何層にも重ねて描かれている
フィクションとも思えない理不尽な状況に感情移入し、怒りと恐怖を感じ、市子の涙にこちらも涙した
ただし、不幸な境遇に翻弄された女の子をかわいそうだなと思う話しとするほど単純では無かった
市子とはどんな人間だったのか、観る人によってその人物像は様々であるように思う
個人的に、今年いちばん心をえぐられた
ちなみにわかり辛い時系列はパンフレットに年表が添えられている
原作は舞台作品であるという
この内容がどのように舞台上で演じられたのか非常に気になった
映画の興行が成功し、舞台の再上演など企画されたなら観に行ってみたい
正直いって本作は傑作だと思う
ぜひ映画館に観に行って、内容を人と論じて欲しい
以下、ネタバレ
エピソードは様々あるが、
わたしのレビューでは殺人についてのみ論じようと思う
作品の中で描かれた市子の3つの殺人
時系列で並べると、1.妹 2.義父?(修正:福祉課の小泉・パンフレットにて確認) 3.北と女の子
これらの殺人に重い軽いはあるのかが自分の中で引っ掛かった部分だった
状況が市子を殺人鬼にしたのか、元から市子にサイコキラーの素質があったのか
市子を演じる杉咲花がはかなげで、可愛いことがこの状況なら仕方ないよねと思う気持ちを助長したとも感じた
だが、3つ目の殺人で、市子が北もろともクルマを崖に落とす事を選択したことを知った時にハッとさせられ、市子の本性を見た思いがした
これらの殺人は3つとも全てが市子の人生を修正するために彼女にとって必要な殺人であったと思う
だが、限界を迎えていた精神状態での前2件は仕方なくて、3つめの殺人は利己的だと言えるのかは大きな問題点で、人を殺めても法の裁きを逃れ続けてきた人間の狡猾さが3件目の殺人で鮮明に現れたのでは無いだろうか
そんな気分でむかえた市子の鼻歌をバックに流れるエンドクレジットに空恐ろしいものを感じた
今後、市子は新たな名前と戸籍を手に入れてケーキ屋さんになるのだろうか
家族団欒を手にする日が来るのだろうか
そのとき、我々はそれをよかったねと笑顔を送ることが正解なのだろうか、、