「すべては観る人の想像力、要解説な人には向かない作品」市子 woinaryさんの映画レビュー(感想・評価)
すべては観る人の想像力、要解説な人には向かない作品
ある意味「不親切」な作品。懇切丁寧に想いを台詞や独白で教えてくれないので、考えないといけない。
どうも自分の子供時代の70〜80年代を感じさせる風景でしたが、舞台となった街では90年代でもあんな感じだったのでしょうか。
ちょっと前に同じ杉咲花さんが出演している作品を観たばかりですが、そちらと被る部分もあれば、当然違う部分も。どちらにしろ、作品中10年近い年代をそれっぽく見せるのですから流石です。
解説によると元は演劇がオリジナルということに納得。決して核心や心の中に直截は触れず、受け取り手に全てを委ねる。断続的に描かれる「事実」がその余白を際立たせる。「市子」が最後にどうなったのか。それを決めるのは観た人で、その結末はおそらく十人十色。単純な「善悪」だけで考えれば悪と断じられるような行為を意図してか流されたのか繰り返していると思われる「市子」。そんな彼女にも善悪は別として、一緒に夢を語ったり、助けようとしてくれる人々が少なからず存在したことが救いでしょうか。
終盤、船に乗る長谷川を見送り深々と頭を下げる「彼女」がとても印象的でした。あとは作中のある人物の言葉でしょうか。ともすれば刹那的とも受け取れるものですが、考えたってどうしょうもない時も生きてれば幾らでもあるもの。過去は過去として、それでも人は今を楽しんでもよいのかもしれない。
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