「美しい赤い車体のフェラーリが華麗に走る抜ける映画だと思っていただけに……」フェラーリ kazさんの映画レビュー(感想・評価)
美しい赤い車体のフェラーリが華麗に走る抜ける映画だと思っていただけに……
この映画の予告編を観た時、観るのはどうしようか迷いましたが
主演の「アダム・ドライバー」が「スター・ウォーズ」シリーズの
「カイロ・レン」役だった事を知り観てみることにしました。
実を言うと……予告編を観ていた時、
アダム・ドライバーは一体どの役?と。
エンツォ・フェラーリ役だと知っても、これがアダム・ドライバーなの?
自分の中ではカイロ・レン役しか知らなかったので、
こんな中年の役をやるなんて……と思ってしまいました。
この映画撮影時、アダム・ドライバーは38~39歳。
1957年のエンツォ・フェラーリ(1898-1988)の年齢は59歳。
20歳ほど上の年齢を演じていたわけですが、全く違和感はありませんでした。
しかし、イタリアを舞台にしているのに言語は英語。
でも、ホテルマンなどがエンツォを呼ぶ時、
エンツォの家で使用人(執事?)が妻ラウラを呼ぶ時も呼称がイタリア語でした。
英語とイタリア語がごっちゃでした。
イタリア語に統一したほうが良かったのかもしれませんね。
車のほうに焦点を置いている話かと思いきや、
冷えきった妻と愛人との間でエンツォがウロウロしているところ、
何気に愛人リナに息子ピエロを認知してよ、と言われているところ、
妻ラウラにリナの事がバレてしまったり……。
私生活についてはアレレな面が……(滝汗)
でも妻ラウラの立場からするとエンツォに向けて(わざと外したけど)
護身用の銃を打ったり
銀行の取引からリナの家を突き止めて、直接行ってしまったり
まぁ、気持ちも分からなくはないですね。
そんな家庭生活のゴタゴタと並行して
社運をかけて公道レース・ミッレミリアに出場するまでの話。
タイムアタックで車がクラッシュして専属ドライバーと車が空中を飛んでいき
ドライバーが道路に倒れているなど、かなり衝撃な場面も(滝汗)
余談だけど、タイムアタックをしていた時に出てきたストップウオッチらしきもの
「made in USSR」でしたね。
オープンカーみたいな構造の車、シートベルトはなく、
道路にある緩衝材みたいなものは枯草?を固めたみたいなものを数段積んだだけ。
あの頃のレーサーがレースの前に遺書を書くのも、分かるような気がします。
命がけだったんですよね。
真っ赤なフェラーリの勢揃いはカッコイイ!!
ギアチェンジの動作、エンジン音、公道レース・ミッレミリアなど迫力があります。
やはり道路には牧草を固めたようなものだけの低い緩衝材があるのみで
観客がすぐ近くで猛スピードで走る抜ける車を観戦しています。
レーサーも観客も危険と隣り合わせです……。
ミッレミリアでライバルであるマセラティの車がまさかの棄権。
最後までフェラーリとマセラティはトップを争うのかと思っていました。
フェラーリのドライバーが途中棄権したマセラティのドライバーを乗せていくところ、
敵だけどいいのか?と。
レース前やレース中に不穏だな……と感じたのは
・ポルターゴがレースの前にホテルで恋人リンダに遺書を書いた
・エンツォがガソリン注入時にレーサーにかけないようにメカニックに言っていた
・犬や子供(の飛び出し)に注意するように言っていた
・コリンズ、タルッフィの乗るフェラーリはマシントラブルが起きた
・最後尾のポルターゴのマシンはタイヤが摩耗していて交換が必要だったが、
ポルターゴはそれを断って発進してしまった
・レーサーが道を覚えていない
・ガソリンが引火して大変な事になる??
・道を間違えてトップでゴールできない??
・走っている最中に何かが飛び出してきてそれを避けようとして事故になる??
・摩耗したタイヤのまま走っているポルターゴのマシンがスリップする??
「何か」が起きる……かな??
そんな気持ちで観ていると……
場面が変わり、一つの家庭の食事風景のシーン。
両親とまだ幼い二人の男の子。
ミッレミリア出場の車が近づいてきたと知ると
男の子たちは家を飛び出し、それを父親が急いで追いかけます。
この場面で……まさか男の子(小さいほう)が飛び出す??と思っていたら
父親がその子を捕まえて抱き上げて、あぁ~……よかった……と思っていたら
ポルターゴが運転するマシンが道路に落ちていた何かを踏んでタイヤがパンクして……
その後の映像は、衝撃的で悲惨でした……。
衝撃で凍り付く……というのはこの事です。
最近動画や映画をいろいろ観ているが、こういう風になることはなかったです。
ただただ……恐ろしくて、悲惨でした……。
スピードを出し過ぎた車の事故に巻き込まれた人や
ドライバーはこんな感じになりますよ、みたいな……。
(ポルターゴのあの最期の姿は事実らしい)
その後の話が頭に入っていかないぐらいに……。
PG-12という年齢制限はこのシーンがあるからなんだね、と思いました。
後でWikiで調べてみると
1957年開催のミッレミリアで実際に起きた観客を巻き込む大事故で
ドライバーのポルターゴ、コ・ドライバーのエドモンド・ネルソン、
そして5名の子供を含む9名の観衆も犠牲になった大事故で
それによってミッレミリア開催は中止になったということです。
(現在は同名のクラシック・カーレースとして復活しています)
最後に妻ラウラがエンツォに「私が生きている間は(リナとの間できた息子ピエロ)を
認知しないで」と言ったシーン。
エンツォ・フェラーリの妻としての矜持を感じました。
エンツォはその言葉を守り、ラウラが死去した後に息子ピエロ(1945-)を認知し
現在ピエロ・ラルディ・フェラーリはフェラーリ社の副会長です。
美しい赤い車体のフェラーリが華麗に走る抜ける映画だと思っていただけに
予想とは違う内容の映画でした。