劇場公開日 2024年7月5日

「期待していただけにあらが目立つ。ちょっとがっかり。」フェラーリ あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0期待していただけにあらが目立つ。ちょっとがっかり。

2024年7月8日
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鑑賞方法:映画館

いつからマイケル・マンが巨匠になった?と思いながら予告編の出来がいいので当然期待するじゃあないですか。野心作だし、レース部分のスペクタルシーンも人間ドラマもまずまず及第点ではあるんだけど期待していただけにね。
まず、アダム・ドライバー。エンツォ・フェラーリっていう人は熱量が多い一方でとても尊大な人物だったと聞いています。おそらくその個性は肉体に由来するところもあったはずで、アダム・ドライバーが起用された理由には巨体の持ち主というところも多分にあったはず。でもアダム・ドライバーという役者は、あれで意外と繊細な演技が持ち味の人であってやっぱりエンツォには見えないのですね。妻と愛人の間でオロオロしている中小企業の社長にしかみえない。ヘンリー・フォード2世に「醜い車をつくっていろ」と言い放った傲岸不遜な感じは表現できていないのです。
フェラーリ社とそのプロダクツについても描き方が不十分。モデナという小さな街にあるいわば町工場でありながら、独特の哲学で優れたエンジンと美しいデザインフォルムのボディを創り出してきたフェラーリの魅力がまだまだ十分に表現できていない(随所にそれを想起させるシーンはある)だからフィアットやフォードの資本参加を匂わせながら必死で生き残りをはかるエンツォやラウラが喪うことを恐れているものが真に迫ってこないのです。
最後にレースシーン。当時の映像などを参考にして実際の車体、ドライバー、公道からの風景などを再現しているのでしょうが基本的に分かりにくい。フェラーリもマセラッティもボディカラーは赤だし、ドライバーはヘルメットとゴーグルを皆つけているので識別しにくい。追いつ追われつといった感じがしないのです。そしてクラッシュシーン。死者がでる大きな事故は前後半一箇所ずつありますがこのVFX処理がとって付けたよう。全体から浮いちゃってます。事故シーンを無理やり入れ込まなくても一筋の煙が昇る、といった感じで表現してしまってもこの映画では良かったのでは。

あんちゃん