「「人間の境界」とそれぞれの対応」人間の境界 てつさんの映画レビュー(感想・評価)
「人間の境界」とそれぞれの対応
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最初にトルコ航空機内での乗客同士の会話が進められるが、当然ながら、使っている言葉も違って通じ合えないところもあったり、家族の情況も違い、その後の境遇で抱える困難も異なっていた。運良く車に同乗でき、レイラは比較的ヨーロッパ事情にも詳しそうだったが、警備隊に軽くあしらわれてしまった。警備兵たちは、すでに「人間の境界」を逸脱していたようにみえた。濡れた服の着替えや傷の手当ては、自分でも日常生活で気にする細かい現実的なことである。トラックで移送された後、一つだけスーツケースが残されていたが、誰か気にしているふうではなかった。手慣れたような活動家も、警備隊からの制約を受け、時には違反行為をしなければならないこともあった。ユリヤの夜間の単独行動は無謀にみえたが、手慣れた活動家たちから見直してもらえる結果となった。友人に協力を断られたりもしていた。当初の家族たちは、命を失ったり、逃げ惑い続けていたが、別の人々を自分の伝手で安全で安心な家庭環境に匿うことができていたり、警備兵にも目溢しをする者もいて、「人間の境界」を守れていて、観ている側も安堵した。エピローグのウクライナ避難民の受入れとの違いは、本当に皮肉にみえた。
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