劇場公開日 2024年4月26日

「"悪があるから善がある"と言うならば」悪は存在しない とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0"悪があるから善がある"と言うならば

2024年5月14日
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あっ…!上から下へ流れる
東京組にキャラクター性を持たせることで、現代社会に生きる私たちの相手への配慮に欠けた無関心な言動=他ならぬ暴力を浮き彫りにしているようだった(そこの社長やコンサルが如何にもな権化だったが自分は"普通"と思っても)。そして、やはりそれらも個人の気付き次第で、"100も1から"といずれより多数へ流れていくのだろうか?

リアウィンドウから撮られた映像。そして、劇伴が途中でブツ切りされるのは勿論、様々な"音"も印象に残った。
あまり進んで喋るタイプでない、濱口監督らしい淡々飄々とした感じの主人公に、説明会シーンから東京組が入ってきて喋り会話量がどっと増える印象。飾られた写真でしか出てこない主人公の奥さんや明かされないバックグラウンド然り曖昧さがある一方で、東京組は車中シーンでベラベラと喋るし、何なら(少なくとも表面的には)主人公たちより彼らの方が共感性が高い描写がされていた。それはまるで自然と現代社会に汚染された個人(観客)という縮図のようだった。
あらすじになるようなメインのストーリーライン以外にも色々な要素を盛り込みながら、最後は観客に解釈を委ねるような曖昧なラストへと流れていく。例えば、この導入プロットで自分が作ったら、あのまま東京組が乗り込んできた当初の目的は果たされて、地元が大変なことになる…なんて表面をなぞっただけの薄っぺらなものになっていたかもしれない。けど、無論そんな想像からは違った。その中で、皆知らず知らずの内に暴力を振るっているということを考えさせられた。
思ったより断然笑えたし、自分の中でまだ咀嚼しきれておらず考える時間が必要だけど、すごい作品だなと感じる。

とぽとぽ