「プロコル・ハルムの"青い影"が傷ついた男女を包み込む」あの歌を憶えている 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
プロコル・ハルムの"青い影"が傷ついた男女を包み込む
過去に深い心の傷を負った女性と、遠い過去の記憶しかキープできない男性が、高校の同窓会をきっかけに出会い、徐々に距離を縮めていく。時間の持つ意味がまるで正反対の2人が恋に落ち、今という時間をどうにかこうにか共有して行く。恋愛は現在、または未来を意味する人間の尊い営み、そして習性なのだ。
女性側の過去については若干既視感があるし、男性が患う若年性認知症に関しては説明不足な点はある。
でも、僕たちが住むこの社会には見た目からは想像がつかない問題を抱え、葛藤している人たちがいて、同じ時間を共有していることに、改めて気づかされる。劇中に俳優のクロースアップはほぼ皆無で、逆にロングショットが多用されているのは、他者に対する視線と距離感を意識した監督の演出なのではないかと感じた。
男性が好んで聴くプロコル・ハルムの"青い影"は伝説の名曲だ。そのメロディが過去を忘れたい女性をも優しく包み込む瞬間は、少し胸が熱くなる。
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