劇場公開日 2024年4月12日

「エルヴィス・プレスリーと光源氏の共通項とは?」プリシラ 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0エルヴィス・プレスリーと光源氏の共通項とは?

2024年4月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

エルヴィス・プレスリーの妻となったプリシラの物語でした。プレスリーが徴兵で赴任した西ドイツで出会った2人でしたが、出会った当時プリシラはまだ14歳の中学生(映画の中では”9年生”と言っていたけど、小中の区別がないのかな?)。そんなプリシラをプレスリーが見染て2人の関係は始まるものの、今なら完全に犯罪ですわな。まあ2人が男女の関係になるのはずっと後なのだけれども、高校生になったプリシラを自分の家に引き取って育てるプレスリーのやり口には、10歳だった紫の上を見染て後に妻とした光源氏を想起させられました。

勿論プリシラの両親はプレスリーの元に行くことに反対する訳ですが、良い高校に通わせて卒業させることなどを条件にそれを許します。でも徴兵が終わって帰国し、芸能界に復帰したプレスリーは、しょっちゅうツアーで家を空けるし、いろんな女優と浮名を流すしで、プリシラの心に平安は訪れない。しかもプレスリーの言う通りにしなかったり、意見を言ったりするとブチ切れて暴力を振るうし、働きたいと言っても許してくれないしと、DV、モラハラのオンパレード。この辺は光源氏と紫の上というより、高橋ジョージさんと三船美佳さんの元夫妻を思い出したのは週刊誌の読み過ぎか。

いずれにしても、観ている方としては「だから止めとけって言ったのに」という話であり、残念ながら1ミリもプリシラに同情も共感も出来ないお話でした。また大金持ちのプレスリーだけに、精神的な安寧を得られずとも物質的な生活そのものは贅沢なもので、その辺りもプリシラに同情出来ない要因だったように思います。
それでもプリシラが21歳になってようやく2人は結婚し、1人娘を設けた辺りは良かったねと言って上げたい気持ちになったものの、2人の気持ちはしっくりいかない状態で推移しました。

結局2人は結婚から5年後に離婚し、1人娘はプリシラが引き取ってシングルマザーになったところで映画は幕。映画的には1人の女性の自立を描いたって雰囲気を醸し出した感はあったものの、前述の通り誰しもが止めた道を歩んだ結果だけに、イマイチもイマニもスッキリしない展開でした。まあ概ね事実に基づいたお話のようなので、文句を言っても始まりませんが。

因みに離婚後のプリシラは女優業もおやりになり、かつまた本作の原案となった「私のエルヴィス」などを執筆するなど、まさに自立した女性として活躍され、現在もご健在のようで、その辺りにも触れていれば、もう少し評価が変わったような気もしないでもありませんでした。

最後にプレスリーが準主役として登場する映画なので、さぞやプレスリーの音楽が目白押しかと思いきや、意外にもそうしたことはなく、最後はドリー・パートンの”I will always love you”で締めくくりでした。実際離婚後も2人は友人関係だったようで、非常にマッチした選曲だったと思います。

そんな訳で、本作の評価は★3とします。

鶏