「◇心理主義の狭苦しい閉塞感」けものがいる 私の右手は左利きさんの映画レビュー(感想・評価)
◇心理主義の狭苦しい閉塞感
19世紀後半から20世紀初頭の英米文学者ヘンリー・ジェイムズの中編小説「密林の獣」を翻案した物語です。
ヘンリー・ジェイムズといえば『#ねじの回転』。私の印象は、学生時代に教材で取り上げられた時の「わけわからん」という居心地悪い後味が長く尾を引いてます。(作品のせいなのか、授業のせいなのか不明ですが、、)
ヘンリー・ジェイムズという作家は、心理主義に分類されるようです。心理主義?普遍的な価値は存在せず、価値は同一人物においてすら不断に変化し続ける、という考え方のようです。
この映画、近未来SFを出発点に時代を行き来する世界を舞台にして、人間の「感情」とか「気持ち」のあり方を映像化しようと試みてます。
前衛的な世界観や実験的な映像作品には引き込まれるような楽しみを感じる私ですが、この作品の閉塞感というか、広がりを感じないというか、、微妙でした。
「人間の感情を削除する」という設定そのものが取り止めもない曖昧性の渦中に引き立てられるのでしょうか。そもそも感情そのものの形が不規則に変化するものであるはず。
変化といえば、一つの作品で女優レア・セドゥの謎めいた多面的な表情変化を楽しめます。美しさ、素朴さ、視線の魅力、妖艶にうっとりとする感覚、その感覚機能の神秘性を自らの意識の中に感じるところに「けものがいる」のかもしれません。
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